第17話
この宇宙の、どんなに小さな星にも、どんなに歪な星にも、どんなにいのちの短い星にも。
それを見守る、星の天使が存在する。
天使は自らの星の最期を見届けると、今度はかみさまとして自分の星のあった星域を見守り、時には流れ着いた星の天使のたまごを保護し、育てていく。
かみさまとなった星の天使に、住める星はない。レイシアも例外ではなく、定住できる星はなくなる。ペーター君2世を置ける場所も、未来永劫、なくなってしまうのだ。
「寂しさも、無いわけじゃありません。でも、落ち込んでいるわけでもありません」
それでもレイシアの顔は、前を見据えていた。どうにもならない理不尽な事であっても、愚痴一つ口に出さない。そのレイシアの輝きが、アウィーナには羨ましかった。
「私の固有魔法は『記録』。あらゆるものにあらゆることを残すことが出来るんです。ペーター君2世はいずれ原子に戻りますけれど、そのひとつひとつに研究の記録は残ってるんです。だから今度は、ペーター君2世が見てくれているこの宇宙の為に役目を果たしたいんです。彼と共に、色んないのちと関わって」
ちょうどその時、ピピピ、と電子的な音が鳴った。星図の用意が出来たのだ。レイシアはそのままそちらへ足を向けて、機械から何かキラキラとしたものを取り出した。
「これは・・・・・・?」
「石を媒体に、立体星図の情報を記録しました」
折角なので、デザインも凝ったものにしてみました。とレイシアは3つの黄色い石をアウィーナに手渡しながら笑う。彼女は声をあげて笑うことこそないが、彼女の希望に満ちた笑みはよく現れる。それぞれ違う形にカットされているその石をじっとアウィーナが見つめていると、レイシアは白衣の内側をごそごそと漁り出した。
「あったあった。今後も何か機能を追加できるように、いくつか私の魔法を使用した別の石もお渡ししておきますね」
白衣の内側から手のひらに乗るくらいの大きさの、重そうな袋を取り出して、それを椅子の上に乗せたレイシア。とってっとってっ、と効果音が付きそうな走り方で、ペーター君2世に立てかけてあった杖を取る。身長の倍くらいありそうな杖でも軽々と持ち上げたのは、やはりレイシアが天使であるからだろう。杖先をすっと袋に向けると、杖の先から黄色い式のような字列が袋を取り巻くように伸びていった。
「はい、どうぞ。石は加工出来るように式を埋め込んであります。必要に応じて、どこかにはめたり、アクセサリーにしたりしてください」
そう言ってレイシアは袋をアウィーナに持たせると、再び瓶底メガネをかけた。眩しさが、見えなくなった。
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