第13話
「・・・・・・やっぱり、エルベの方が速かったね」
「つまり、叔父も君たちより運動能力は高いってことだね。となるとやっぱり、君たちにしかない技術でなんとかするしかないかな」
ぜぇぜぇと息を切らしていたのは、ヒイロ一人だけだった。力が抜けるようにぺたりと、ヒイロが再び地面に座り込むと、それを合図に再び作戦会議は再開された。
「僕の技術って言っても、まだまだ子供だし限界はあるけどね・・・・・・とりあえず、ここにあるもので使えそうなものを探すことからかな」
「なにをされそう?なにをつくればへいきになるか、かんがえたほうがいい」
「あいつはきっとどさくさに紛れて・・・・・・そう、つまり、自分が神子になった時になるべく疑われないようなシナリオを作りたがるだろう。だから、自分で手を下すことはないと思う。二人きりになったら疑われるだろうし、あいつは表立って動かない」
ふんぞり返っているだけのあいつのことだから、きっと裏側にはそれはそれは優秀な参謀がいるはずだよ。エルベは更にぽつりと呟いた。そんなんじゃ、どうせ僕らを殺せたとしてもその参謀に乗っ取られちゃうだけなのにね。エルベには肉親に対する感情らしきものは無かった。ただあるのは、冷ややかな軽蔑だけ。
「エルベには、その参謀とやらの心当たりが?」
「あるにはある。けど確信まではいかない」
このままでは多分埒があかない、そう思ったヒイロは、更にヒトという種族とオーデルという種族の違いについて理解しようと試みる。
「そもそも、君たちはどうしたらその・・・・・・死ぬのかな」
エルベが片手を顎に持っていく。考える時の仕草は、人間のそれと何ら変わりなかった。
「色々あるにはあるけど、代表的なのは核を破壊することだ」
核。ある意味では聞きなれているけれど、この場合は聞きなれない言葉だ---それがヒトにおける心臓にあたるだろうということくらいは理解できた。
「核は、体の中心を一直線に貫くように存在している」
そう言うと、エルベは徐ろに自分の耳に触れた。さわりと音がする。
「この緑を作り出してるのも、核だよ」
耳の先から、植物の茎のような、でもそれよりはずっと細い緑の紐のようなものが床まで垂れていた。走っていた時には誰も気が付かなかったけれど、体の一部だから痛みもあるのだろう。運動するのには邪魔そうなはずなのに、なぜ気付かなかったのだろうか?
「これは保護色が使えるし自分の意思で自由に動かせる。武器にもなるかもしれない」
エルベは耳から手を離すと、緑の紐は徐々に上へ上へと登っていく。それはまるで、メデューサという文字の上の生き物のようだった。
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