第2章-惑星ポーレチケ

第7話

赤い少女天使が守る星を急いで飛び出してきた。宇宙船のレーダーで現在地を把握しようと思ったものの、何故かここではレーダーが使えないようで、ヒイロは行先を悩んでいた。

「あの、アウィーナさん」

「はい、なんでしょうか」

「どうしたらいいと思います?」

そうですねぇ。アウィーナは言う。そうだ、アウィーナならこのあたりの星も知っているのではないか?

「残念ながら、この星域について私は知識を持ち合わせてはいません」

アウィーナは、親切に星の天使のあれこれについて解説を始めた。プロローグは、あなた達ならきっとこれを知ることも許されているのでしょうという言葉から。


そもそも星の天使とは、生まれながらに自分の見守るべき星を持つ天使のことであり、自分の星、他の星問わず、星の住民には基本的に姿を見せない。星の天使は、たまごから生まれ、生まれたばかりの新米天使は、先輩天使、もしくは自分の星の最期を見届けた「かみさま」に育てられる。一人前になると、自分の星に呼び寄せられる感覚を覚え巣立っていく。

星の天使は生命の総数程ではないが数が多く、全員が何かで繋がっているわけでもないので、大抵は育った星域と、自分の星がある星域の天使ぐらいしか分からない。

話の内容を要約するとそんな感じだ。


「なので、私が知る星域にたどり着くまでは、なるべく星の配置図を手に入れられるようにしたいのです。その為には、星の天使、あるいは星々の住民の協力が必要不可欠になります」

そこまで言って、アウィーナは窓の外を見つめた。すると、先に窓の外側の星空を見つめていたサヨが、ふとひとつの星を指さした。


「あそこ、ちのうのあるいのちがいる」

星自体だって目を凝らさないと見えないほどに小さいのに、肉眼で生命など見えるはずがあろうか。ヒイロもアウィーナも、驚きを目に宿し、しかしアウィーナを呼び寄せた謎の力を知っていた彼らは同時に酷く冷静でもあった。感情は矛盾していても同居できるのであると、ヒイロははじめて理解した。

「もう少し、近付いてみよう」

そう言ってヒイロは宇宙船の操縦桿を握り直した。それまで一点に止まっていた宇宙船は、ゆっくりと動き出し、星の近くへと進む。緑色の星だ。植物の色ではなく、地面の色が緑。


「どうやら本当に知能のある生命体が存在するようですね。地図が入手できる可能性もあります」

「でも、いきなり近付いたら攻撃される可能性がある」

「アウィーナ」

「なんでしょう」

「アウィーナなら、あのほしのてんしにかけあえない?」

サヨとアウィーナの会話は何処かぎこちない。お互いに何処か合わないものを感じているのか、それとも---


「分かりました。交渉、してみましょう」

その言葉でヒイロの思考は引き戻された。アウィーナは宇宙船のドアを開け放ち、そのまま星空へと落下していった。

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