第4話
まっしろな羽。青いひとみ。それは紛うことなき天使の姿だった。身の丈と同じかそれ以上あるきらきらした杖を伴って、驚いた様子を隠すこともなく立っていた。
「わたしが、よんだ」
「・・・・・・あなたが?何者?」
ヒイロは少し話して理解したが、サヨは無知だ。だから、他人を「恐れる」とか「怯える」とかいった感覚も勿論知らなかった。ヒイロにしろ、ついさっき現れた彼女にしろ、話しかけることが出来た。ヒイロはサヨのそれを少し羨ましく思いながら2人の女性のことを見つめる。
「・・・・・・わからない、けど、多分あなたなら」
このひとのこと、たすけられるからよべた、んだとおもう。サヨがそう言うと、二人の視線は同時にヒイロに向いた。今までサヨひとりだったからよかったが、ヒイロは女慣れしていないため、二人もの女性に視線を向けられることになんとなく気まずさを感じた。
「この人間を?私がですか?」
「そう。ヒイロのケガと、あれ、なおして」
サヨはあれ、と宇宙船の残骸を指差した。
「ちょ、ちょっとサヨ・・・・・・」
「なに?ヒイロ、たすかる。ちきゅう、いける」
サヨは悪びれる様子を見せるどころかヒイロとその宇宙船の回復を、と要求しているが、いきなり不可思議な力に吸い寄せられた上、ああしろこうしろと言われても女性は当然困るに違いない。
「あの、いきなりすみません。僕、ヒイロっていいます。この子が迷惑かけて、本当にごめんなさい」
「・・・・・・いえ、こちらこそ名乗りもせずに申し訳ないです。私はアウィーナ」
背丈は成人女性ほど。ミルクティーよりも少し濃い茶色の髪は昔で言うボブになっている。青い瞳は宝石のようにきらきらと輝きながら様子を伺っていた。
「あなたと、彼女は一体何者で、どのようなことがあなた達に起きたのですか。それを詳しく話してもらえないと、お力にはなれません」
協力しない、とは言っていない。どうやら事情、というかヒイロとサヨの態度次第で協力を考えているようだった。
「僕とこの子はついさっき知り合ったばかりです。僕は地球を目指して旅をしていたけれど、事故でこの星にたどり着き、サヨは目覚めたらここにいたそうで、記憶がないそうです」
「ヒイロをたすけて、サヨもヒイロといっしょにちきゅういく」
「サ、サヨ!?何を言ってるんだ」
一緒に地球に行きたいだなんて初耳だ。僕とサヨとの短い会話の中にサヨが地球に憧れるような発言をした覚えはないぞ、とヒイロは眉を顰める。
「・・・・・・なるほど。」
そんなヒイロをよそにアウィーナは一息おいてこう言った。
「確かに、私にはあなた達を助ける力があります。あなたを治癒することもできるでしょう」
「じゃあ」
「しかしそれは私一人の権限ではできない」
大人しくできずつい言葉を放り出したサヨを遮るかのようにアウィーナは話を続けた。
「元々、人間は数多く存在する。ひとりふたりいなくなったところで差し支えありません。
だから、少人数を救うときは特別な時。許可を得なければならないのです」
名乗った以外、アウィーナは自らのことを語りはしなかった。しかしこの発言から嫌でも分かるだろう。彼女はヒトよりもっと高位な存在であることぐらい。
「まずは、会ってみましょう。私の同業者---この星の、星の天使に」
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