あとがき
2015年は私にとって「死」と縁深い年だった。
それまで冠婚葬祭行事に呼ばれることなんてほとんどなかったのに、やはりそういう年齢になったということなんだろうか。
年明けてすぐに会社の同期のお父さんが亡くなり、冷たい雨が降る中での先輩の二歳にもならない娘さんの突然の死……そして桜が散り新緑の匂いがし始めた頃、長い間病気と闘い続けた祖父が静かに息を引き取った。
少し前に母から危篤の連絡を受けて、今週末にはそっちに戻っておじいちゃんに会いに行くねなんて話していた週の半ば。一歩間に合わなかった。霊感も何も無い私は夢枕でも祖父に会えず、悶々としたまま新幹線に乗った。
火葬場というものは初めてで、一つ一つが新鮮だった。地域によって全部拾骨と部分拾骨の文化があるらしい。地元・名古屋では部分拾骨だった。お骨上げをして骨壷の中におじいちゃんの骨が収められていく。一方で、そこに取り残された灰……故人を形づくっていたものはどこへ行くんだろうと、本当はこんなこと考えることすら不謹慎なのかもしれないが、とてもやるせない気持ちになったのを覚えている。
今振り返ってみると、お葬式とは、故人を送るためのものであり、遺族が一歩前に進むためのかもしれない。
大事な人を亡くした人にとって、その死を認めるかのようなお葬式なんて、あげたくないのが普通だろう。死亡届の提出や葬儀会館でのやりとりなど事務的な手続きばかりで、命という形にできない重たいものとは不似合いな段取りがたくさんある。だけど、そういった段取りを無理にでも経ていくことで、遺族は死という事実を受け入れ、前に進むための準備をしていくのかな、と。
『御伽術師・花咲か灰慈』はこうして感じたことを現代ファンタジーとして昇華させた作品でした。
続編も書けそうな内容ですが、一旦これで完結とします。本編では書ききれなかったネタがいくつかあるので、本作とは別にキャラ設定や番外編を集めた『花咲か灰慈〜小噺集〜』を投稿しています。収録予定としては灰慈の祖父の過去、ツヅラや雪乃視点の物語など。もし本編を気に入っていただけましたらこちらも是非。
最後になりましたが、ここまで読んでいただいた方に心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。
P.S.
天国にいるおじいちゃん、そちらでも大好きな読書はできていますか? いつか私の書いた文章を届けられる時が来ますように。
【参考文献】
・『図説日本の昔話』石井正巳、河出書房新社
・『近世子どもの絵本集 江戸篇』鈴木重三、木村八重子、岩波書店
・『火葬場』浅香勝輔、八木澤壮一、大明堂
・『家族のための現代葬儀大事典』二村祐輔、東院日書
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