第2話『Happiness 幸福というもの』 加筆修正2021.9.5
2.
" An Insolent Person 無礼者 "
3月に行われた倉本主催の2回の合コンに、運よくあかねが
参加していた。
4月には倉本カップルと一緒の合同カップルでのカラオケデート
に映画デート、会社帰りのデートを経て5月には結婚前提の交際を
申し込み、正式に交際スタート。
夏の終わりに両親にあかねとの結婚を考えていると話したが
母親からの頑固な反対に遭う。
年上というだけでも嫌なのにおまけにバツイチだなんてとんでもない。
あなたの結婚相手ではないと激しく抗議された。
竜司は母親がふたりの結婚に難色を示していることを正直に
あかねに話した。
気長に母親を説得していくつもりだがどうしても賛同が得られない
その時には家を出る覚悟がある、僕に付いて来てほしいとあかねに
胸の内を告げた。
父親と兄や義姉達からは概ね良い感触を受けた。
そんな中10月も終わろうとする頃、母親があかねに一度会っても
良いと言い出し、竜司は母親の心境の変化を心から喜び、取り急ぎ
会合をセッティングした。
竜司が喜んでいる一方で母、政恵は長男の稔や嫁の知沙子達の
いる目の前で、あんな年増のバツイチなんて絶対家になんて
上げないわよ、会うのはどこか他所で充分、と驚くべき発言をしていた。
兄の稔も兄嫁の知沙子もこれには内心大いに驚いた。
これからもしかしたら家族になるかもしれない相手に
対して言うべき言葉ではなかったからだ。
この政恵の発言から、弟の結婚がスムーズに運ぶとは
とても考えられなかった。
うれしそうに段取りをつけている弟を横目に、何と言って
やればいいのか稔には上手い言葉が見つからなかった。
2-2.
そんな中、10月末の吉日にホテルでLunchを摂りながらの
あかね、竜司、竜司の両親との顔合わせとなる日を迎えた。
あかねは失言があった場合、次に生かそうと顔合わせの後で
ひとり反省会をする為に、この日の会話を録音していた。
のっけからの不躾な質問が政恵から出た。
「あかねさんは一度結婚されていたと聞いていますが離婚
理由を教えてくださらない?」
父親と竜司は思わず顔を見合わせた。
あまりな質問内容に冷や汗をかいたものの、竜司自身そこは
多少なりとも知りたいところではあった。
『別れたとはいえ、一度は好きで一緒になった人のこと相手にも
立場があるので詳細は申し上げられません』
と、あかねは軽くかわした。
母、政恵は目を見開いて怒りを隠そうとはしなかった。
思えばここに着いてからの政恵は挑発的で友好的な雰囲気は
全くない。
ふたりの仲を漸く認めることにしたからこそ、あんなに結婚は
反対、あかねにも会わないと言ってたのを覆して、会っても
いいと言い出したのではなかったのか。
てっきり友好的に会って話してくれるものとばかり思って
いた竜司は、そうではない母親の言動に己の判断能力の欠如を
目の当たりにし、頭を抱えた。
母親に頭が上がらないのか、はたまた訳あって上げられないのか
知らないが、外的には有能な父親もこの場であってみれば
ただの木偶、あてにならない無用の長物と化している。
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