第45話
紅茶を飲んだ後でもウェインさんとの会話は続いた。
「シフォンとランジュは付き合っているらしく同じ街で育った幼馴染みだ」
「へー、なんか想像すると真面目カップルって感じでお似合いですね」
「シフォンはスライムレースのブリーダーだったんだが、親が旅に出てな。親の後を追うように冒険者になったらしい。ランジュはシフォンが心配で付いてきたらしい」
「お父さんは見つかったんですか?」
「見つかったが別の女性と交際していてな。それでシフォンはドライな性格になったんだ」
「ひどい話ですね」
「本人はもう気にしてないから話題に出してもケロッとした顔で答えるぞ」
「言いたくありませんよ、そんなこと」
「それとキースは元々ストーンカ国の出身で騎士をしていた」
「それがどうしてウェインさんと旅することになつたんですか?」
「その時はたまたま酒場で起きた騒動でキースを巻き込んでしまってな。それ以来成り行きで旅を共にすることになった」
「どんな騒動だったんですか?」
「騎士団と冒険者の喧嘩が原因でな。酒が入っていたせいか大乱闘になってしまってたまたまキースが私の隣の席にいて一緒に逃げようという話になったんだ。それで一緒に逃げた後にお互い自己紹介して旅をしていると言ったら憧れて騎士をやめて一緒に冒険することになった」
「憧れですか」
「なんでも広い大陸の中で同じ場所に16年間も住んでいたから遠い場所に強い好奇心と憧れがあったらしいんだ」
「そういえばウェインさん達が旅をしている時にどういう理由でストーンカ国の政務を担当することになったんですか?」
何だかそれが一番気になったので俺は茶菓子を食べているウェインさんに質問した。
「それはストーンカ国がある日深刻な人材不足に陥ってな。そんな噂が大陸中に流れた時にキースが国に戻って政務をして欲しいと頼まれたんだ。シフォンとランジュは賛成してノヴァも治安維持の隊長とかやりたいとか言うもんだから、旅を中断してストーンカ国に戻ったんだ」
「ウェインさん達はどこを目指して旅をしていたんですか?」
「ジェネレーションタワーだ。私だけそこに向かうことを言ってシフォン達とはそこで別れた」
「そんな経緯があったんですか」
「元々ジェネレーションタワーには色んな秘宝や武器が眠っているという言い伝えもあったからな。冒険者なら一度は行ってみたいと思う場所だ。ちなみにジェネレーションタワーの付近には街が出来ていて観光スポットみたいな扱いになっている」
「冒険者がたくさん来るから自然と街も出来たんですね」
「そんなところだ」
ウェインさんと話をしていると時間はもう夕方になっていた。
「そろそろ2、3時間の仮眠を取って女王の護衛に入らなければな」
「そうですね。目覚ましセットしておきます。ウェインさんも目覚ましのセット忘れちゃダメですよ。俺1人では意味ないですからね」
「わかっている。それじゃあまたな」
「はい」
そう言ってウェインさんはドアを閉めて自分の部屋に戻っていった。
俺も目覚ましを3時間後にセットしてベッドに入って瞼を閉じた。
(いざ怪盗ルブジオンと対決するとなると緊張して寝付けないな)
俺は気を紛らわすために俺の世界のことを考えた。
そういえば予約していたゲーム届いたけどやってなかったな。
怪盗ルブジオンを倒したら一度俺の世界に戻って学校生活やりながらゲームしたいけど、ウェインさんがいる限りそれは不可能だな。
そんなことを思っていたらベッドの心地よさにつられて意識が遠くにいってしまった。
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