第40話
俺は今ストーンカ国の宿屋つばき亭にいる。
ウェインさんの転移魔法で宿屋の前に召喚された。
周りの人たちはいきなり人が現れたものだから騒いでいる。
ウェインさん何も指定した宿屋に直に召喚しなくてもいいのに…。
とりあえず急いで別の場所に移動した。
シフォンさんに会う前に色々なところを回ってみたい気もしたが、もう城に入って時間を潰そうと思った。
俺は町で一番高い城を目指して歩いて行った。
町は馬車や人が多くいて賑やかだった。
亜人専用の酒場とかバザーなどもあり見た事もない商品が値札を付けて並んでいた。
良く言えば雰囲気の明るい悪く言えば雑音のうるさい城下町だった。
そういえばウェインさんの仲間ってどんな人たちだろう?
案外普通の人達かもしれない。
そんなことを思いながら城の前に着くと衛兵に用件を言って紹介状を渡した。
しばらくして城門が開いて中に入ることが出来た。
衛兵に案内されて城の客室で待っていると紫色の髪をした青年が入ってきた。
「初めまして、君がウェインの友人の山城君だね」
「は、はい。そうです。あなたは…」
「僕はシフォン・クレスト。ウェインとは一緒に冒険をした仲だ」
「あなたがウェインさんの言っていた仲間のシフォンさんですか、初めまして山城健二です」
「そこに座って話そう。ウェインのことも色々と近況が聞きたいからね」
シフォンさんと椅子に座り、話をすることになった。
「ウェインさんは元気ですよ。戦闘だってあっさりこなしちゃうし」
「やはり闘神ウェインは健在か、あいつは僕達の事をあまり話さない奴だから僕らがどんな奴か解らないだろう」
「え、そんなことないですよ。この前真面目な人たちだと話してくれました」
「あいつらしい言い方だな」
「実際の所どうなんですか。やっぱり真面目なんですか?」
「あいつが他と比べて変わってるだけだ」
「ウェインさんはただの寂しがり屋でちょっととらえどころのない人なだけですよ」
「初めて会った時はまだジェネレーションタワーに登っていない頃で好奇心旺盛で純粋な少年だったんだ」
「へー今考えると信じられない話ですね」
「ちょうどウェインを入れて5人目の仲間だったよ」
「大人数で冒険していたんですね」
「その時は魔王ガブリエルが倒されて平和への復興の時代だった。そんな時にウェインは新しい魔王が出る前に自分が英雄になると言い出してジェネレーションタワーに登っていったんだ」
「ジェネレーションタワーに登った理由はなんとなくって本人は言ってましたよ」
「あいつの事だ。塔を登っている時にもしかしたら新しい魔王は出てこないとも思い始めて塔を登る理由が曖昧になってなんとなくになったんだろう」
それじゃウェインさん何の為に塔を登ったんだ。
ただの暇人の暇つぶしにしかならないじゃないか。
「実際新魔王の到来は無く魔物だけが人々の恐怖の対象になっている」
シフォンさんが話を続ける中で俺はウェインさんのことを考えた。
ウェインさんが塔を登ったからこそ新魔王が到来しても世界を救える安心感はあるかもしれない。
今は英雄になれないが災いが起これば英雄候補となるのがウェインさんなのだろう。
それなら塔を登ったことも無駄ではない。
「でもウェインさんが塔を登ったことって無駄じゃないと思うんです」
「そうだな。事実あいつは力を付けたらしいし、この国に戻ってきては欲しいのだがまだ来ないしな」
「それはウェインさんが自由すぎる性格をしているから戻ってこないだけで、もしかしたらウェインさんのことだから昔の仲間に会うのが気恥ずかしいだけなのかもしれません」
「ははっ、確かにそれは十分ありえるな」
部屋にメイドが入ってきてテーブルにお茶を置いてくれた。
「この国に来たばかりだろう。城内の客室以外にもいけるようにはしてある。城でゆっくりしていって欲しい」
「ご好意感謝します。城下町は賑やかでした」
「いつもああなんだが今日は女王感謝祭の日でもあるからいつもより人が多いんだ」
「この国の女王に会った事はないんですが、どんな方なんですか?」
「ストーンカ国28代目女王のアリーシアさんは気さくな方で有名だ。普段は自室で政務を行っている」
「歴史の長い国なんですね。というか女王自ら政務をしているんですか?」
「なにぶん今は人手が足りなくてな国の運営に忙しいんだ。ウェインの奴は自由気ままだがこちらはその分大忙しだ」
「あのウェインさん明日俺を迎えにこっちに来るんですけどシフォンさんと会った方がいいですよね」
「そうなのか、それならあいつに言ってやりたいこともあるし、できればこっちに連れて来てほしい」
「やっぱりそうした方がいいですよね。本人だけ自由気ままに旅して仲間と国をほったらかしにしているのは良くないですし、ちなみにウェインさんは宿屋のつばき停で会う予定です」
「わかった僕もその日は政務を休んで山城君と同行しよう。もう日も遅い今日はこの客室で寝ると良い。何か必要な物があればメイドに言ってくれ」
「わかりました。それじゃあ今日はここで泊まります。政務が忙しい中わざわざ出向いてくれてありがとうございます」
「それじゃあ失礼するよ明日と言わず何日でもこの国にいてもいいよ」
シフォンさんはそういうとドアを閉めて去っていった。
俺は引き出しから寝巻を出して着替えて、客室のベッドにダイブした。
そういえば今はウェインさん1人で旅しているけど話し相手に困ってないかな?
今頃それに気づいてハッとしているんじゃないだろうか?
それなら俺の意識に語り掛けるはずだけど、まだ来ないな。
意識の語り掛けはこっちの世界だと出来ないんだろうか?
そんなことを思っていたら瞼が重くなってきた。
ベッドの睡眠への誘惑に負けて俺は深い眠りの世界に旅立った。
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