第39話

 ウェインさんと引き続き旅をしていると、大草原でモンスターをまた見つけた。

 メイジゴブリンにワーウルフ、ローパーが数匹だ。

 俺はウェインさんの異空間から槍を出してもらい戦闘の準備にかかる。

「山城は後方にいるメイジゴブリンを相手にしろ」

「わかりました」

 ウェインさんの合図と共にモンスターの群に奇襲をかける。

 俺の槍の一撃がメイジゴブリンの1匹目に命中する。

 モンスター達は一瞬動揺しているようだったがすぐに戦闘態勢に入った。

 メイジゴブリンのこん棒の一撃をかわして、槍を振って距離をとる。

 メイジゴブリンが複数こん棒を持って振り回す。俺も負けじと槍を振りまくる。

 無我夢中の攻防の中でゴブリンの隙が見えたのでそこに槍をついた。

 メイジゴブリンが奇声を上げて息途絶える。

 もう1匹が襲いかかる。

 槍に刺さったメイジゴブリンごと襲いかかるメイジゴブリンにぶつける。

「このぉ!つきさされー!」

 ぶつけただけでメイジゴブリンは吹き飛んで槍からやられた方のメイジゴブリンが抜け落ちた。

 そのまま吹っ飛んだメイジゴブリンに突き刺す。

 これでメイジゴブリンは全滅した。

 あとはウェインさんの加勢だ。

 そう思ってウェインさん側を振り向くと既に戦闘は終わっていたようで辺りはローパーとワーウルフの肉片が飛び散っていた。

「ウェインさん無事ですね」

「ああ。山城も無事で何よりだ。調理に使うワーウルフの肉を剥ぎ取るから手伝ってくれ」

「今夜の晩御飯になるんですね、わかります」

 そういいウェインさんの手伝いをした。

 ワーウルフの肉片を異空間に放り込みながら会話する。

「何気に初めて倒したモンスターですよ。メイジゴブリン2匹ですよ」

「よかったな。それだけ山城が成長したということだ」

「でもウェインさんに比べれば全然ですけどね」

「私は特殊な一例だから比べてもしょうがない」

「言い切るところが嫌ですね」

「山城も登ってみるかジェネレーションタワー。そうすれば私と並ぶかもしれないぞ」

「何年かかるかわかりませんよ。遠慮しておきます」

 ワーウルフの肉片の片付けが終わって、あとは血生臭い草原だけが残された。

「さ。次もあるから進むぞ山城」

「この分じゃ日が暮れるころには何体倒しているか解りませんね」

「そんな頻繁に出てくる場所ではないだろう。恐らく」

「これで最後ってわけにはいきませんもんね」

「山城。慣れ始めの頃が1番危険なんだから気を付けるんだぞ」

「解りました。できるだけ慎重に戦いますよ」

「そうしてくれ。そういえば昼になるな、腹は減らないか?」

「こんだけグロいモンスターの死骸だらけの場所で言われても食欲湧きませんよ」

「なら場所を移動しよう。そうすれば食欲も多少は湧くだろう。食べないまま進むのは危ないからな」

「料理はさっきのワーウルフの肉片以外でお願いしますね」

 さっき倒したモンスターの肉をさっそく食べるのはどうにも苦手で抵抗がある。

 当分は肉類は食えそうにないが朝オークのステーキ食べたばかりなんだよな。

 慣れって怖いな。

「わかった。さ、行くぞ」

 ウェインさんの一声と共にこの場をさっさと去っていった。

「そういえばモンスターって喋るんですよね」

「ああ、だが戦闘になると喋る余裕もないだろう」

「なるほど。どうりでモンスターと戦っても喋らないわけだ」

「彼らも普段は話をしている。闘いの時だけだ簡単な命令を言う以外は喋らない」

「モンスターって喋らずに犬みたいに吠えて襲い掛かってくるものだと思ってましたよ。特撮の怪人みたいに」

「特撮の怪人?なんだそれは」

「俺の世界でやってるお芝居の1つでそういう勧善懲悪ものがやってるんですよ。怪人っていうのはその特撮の役の1つですよ」

「そうなのか。今度見てみたいな」

 まずい俺の世界に興味持たせてどうするんだろ。話題を変えよう。

「そういえばストーンカ国の仲間達にはウェインさんが呪いにかかったこと知らせないんですか?」

「彼らは国の政務で忙しいからな。私のことで悩みの種を増やすわけにもいかないだろう。真面目な連中だからそっちの方を優先して国を傾きかねん」

「そこまで必死になってくれる人たちなんですか。良い人たちですね」

「ジェネレーションタワーに登るときも心配されたよ」

「俺にもそんな人たちが友人にいればいいんですが、いないっすね」

「私じゃ不満があるか?」

「いえ、そういうことはないです。むしろ元が男じゃなければ友達になりたがる男子が後を絶えないと思いますし、俺も友達になりたがると思います」

「クラスの人気者と言う奴か」

「そうですね、よく知ってましたねそんな言葉」

「山城の世界の漫画で知った言葉だ」

 結局俺の世界の話になるんじゃないか。

「お、俺ストーンカ国行ってみたいですね」

「急にどうした?」

「ウェインさんの仲間たちにきょ、興味が湧いてきたかなーって…」

「そんなに行きたいのか?」

「ちょ、ちょっとだけです」

「なら転移魔法でさっそく行ってみるか?今すぐにでも行けるぞ」

「えっ、でも言ったら呪いの事で話題になっちゃうじゃないですか?」

「それもそうだな。山城だけ行かすようにしよう私は後から合流する。1日後に来るから指定した宿屋にいればそこで再会しよう。私の直筆の紹介状も渡せば彼らも納得してくれるだろう」

「そ、そこまでしてくれるんですか。なんか悪いですね」

「山城が行きたいというから仕方なく書いて行かせてやるだけだ。たいしたことはない」

 なんだか観光旅行に行くみたいなノリになってしまったな。

「明日の夕方頃に宿屋つばき停にいれば迎えに来れる。じゃあ紹介状書くから少し待っていろ」

 ウェインさんはそういうと異空間から机と紙とペンを取り出し紹介状を書きはじめた。

「出来たぞ。城の衛兵に渡せば通してくれるウェインからシフォンに使いが来たと言えば大丈夫だ」

 そういってウェインさんは紹介状を俺に渡した。

「それじゃあ転移魔法を唱えるぞ準備はいいか?」

「あっその前に簡単な荷物とゴールドお願いします」

「そうだな。異空間から取り出すから待ってろ」

 ゴールドと衣服などが積まれた荷物を持つと俺は槍を抱えて準備を整えた。

「準備オッケーです」

「それじゃあストーンカ国へ飛ばすぞ」

 こうして俺はウェインさんの仲間のいるストーンカ国へ1日だけ観光旅行へ行くことになった。

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