第38話
ウェインさんの背中を見ながら後ろを歩いて1時間が過ぎた。
モンスターはあれからやってこないものの油断は出来ない緊張と退屈が混じった不思議な感覚に俺は疲れが出ていた。
「山城大丈夫か?」
「いえ。ちょっと緊張と退屈が混じったなんともいえない感覚にまいってます」
「そうかそれなら少し休もうか」
「でもここで休んでもモンスターがいつ現れるか解りませんし、このまま歩きましょう」
「疲れが出ている時は普段以上の戦闘力は出せない。休んだ方がいいだろう」
「そういうことなら足手まといになるのは嫌なのでここで座って休みます」
俺はそういって尻もちをついて草原の中で横になった。
「見張りをしておくから今のうちに体力を回復しておけ」
「大丈夫だと思ったら声かけますね」
思っていた以上にハードな旅だと実感した。
大勢いる時はそんなに疲れなかったが2人きりでモンスターのいる危険地帯にいるとどうしても緊張が出てしまうし、集中力が切れてたるんでしまう。
こんなことでウェインさんの呪いを解くことが出来るのだろうか?
その呪いだって手掛かりがないし、いつになるのか。
とにかくこういう事態に慣れなければいけないだろう。
俺は横になりながらそんなことを考えていた。
青い空に雲と飛空艇が浮かんでいる。
やっぱりあの時の戦闘で剣なんか使わずに槍を使えばあんなことにはならなかったかもしれない。
というより何で剣使ったんだろ?
なんとなくかっこつけたかったからに決まってるか。
我ながらバカなことをしたものだ。
あとギュフイの都市に行った時に呪いを解く方法が見つからないって言われたっけ。
あの神殿でもヒントらしいヒントもないままだったなぁ。
ウェインさんは旅を楽しみたいとか言って転移魔法を使わないから長い旅になるのは解ってたけど、このままノーヒントで旅が続くと俺はいつになったら帰れるか解ったものじゃない。
なんでこんなことになったんだっけ?
ウェインさんの呪いを解くのは友情だからかな?
レオンハルトさんが宿舎で言っていた言葉が思い出される。
友情っといっていたが、なんとなく巻き込まれてなんとなく付き合ってるだけなんだよな。
それで俺の世界にウェインさんがいると厄介だからこうして呪いを解くために旅に付き合っているだけなんだ。
それだけなのに今は情が少しうつってしまっている。
戦闘の時のウェインさんはちょっと怖いけど、普段は寂しがり屋の人なんだよな。
寂しがり屋なのは強いから孤独なのかもしれない。
そうした強さが周りから離されて、ああいった寂しがり屋になったのかもしれない。
一緒にいてやる方がウェインさんにとっては幸せな事かもしれない。
でも俺にとってはどうなんだろう?
わからない。
友人になるって簡単なようで難しいものなのかもしれない。
転移魔法を使わないのだって旅が早く終わるとウェインさんが寂しくなるから使わないだけなのかもしれない。
ウェインさんはきっとものすごい寂しがり屋なのだろう。
国で政治をしている仲間達がいるって言っていたけど、もしかしたら距離があるのかもしれない。
いや考えすぎだろうか。
単にウェインさんにはウェインさんの世界で友達がいるけど、俺はジェネレーションタワーという友達が呼び出せない場所で仕方なしに呼ばれた友達の1人にすぎないのかもしれない。
それは俺にとってはどうなんだろう?
今まで友達らしい友達っていただろうか?
別にいなくても人生は過ごせる。
けどウェインさんと旅してほんのちょっとだけ楽しいと思える自分が何故かそこにいた。
だったら一緒に旅を続けるしかないじゃないか?
そんなことを考えていたら体の疲れが前より取れてきた。
俺は起き上がるとウェインさんに声をかけた。
「ウェインさんもう大丈夫です」
「そうかなら旅を続けるぞ」
「呪いを解く方法ってどこにあるんでしょうね」
「私にもわからない。ギュフイにいってもお手上げだったからな」
「見つかって解けるまでは一緒にいますよ」
「解けたあともいて欲しいのだが」
難しい問いかけが出てきた。
どう答えるべきなんだろう?
でもたまに異世界にいくのも気分転換になるかもしれない。
「たまにだったら異世界にきてもいいですよ」
「そうかそれなら別にいい。ありがとう山城」
「きゅ、急にどうしたんですか?」
「無理やり旅をさせているようで悪い気がしたのでな」
「モンスターにはやられっぱなしですけど、こっちの世界は色んなことがあって新鮮ですから別に悪い気はしませんよ」
ウェインさんは何も言わなかったが笑顔で答えてくれた。
綺麗な女性の笑顔だった。
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