第41話

 朝起きると私服に着替えて食事の間に行って、シフォンさん達と朝食をとった。

「おはよう山城君。昨日はよく眠れたかい?」

 シフォンさんが俺に声をかける。

「はい良いベッドだったので普段よりよく眠れました。そちらの方々は?」

 俺は他の3人の人が気になったので質問をした。

「ああ、彼らは僕と同じウェインと旅を共にした仲間達だ。そういえば紹介していなかったね」

 シフォンさんがそう言うと隣の青髪青服の青年が俺に声をかけた。

「初めまして俺はウェインと旅した仲間の1人でキースだ。シフォンと同じくストーンカ国の政務を担当している」

 さらにキースさんの隣にいた金髪の長髪の僧侶みたいな服の女性が会釈した。

「私はランジュ。キースと同じくウェインの仲間の1人で同じく政務を担当しているわ」

 そして大きな剣を持った小さい少年が元気よく俺に挨拶した。

「俺はノヴァ。シフォン達と同じく政務じゃないけど治安維持部隊の隊長をしているんだ。ウェインとは1番付き合いが長いんだぜ」

 みんなの自己紹介が終わると俺はシフォンさん以外に改めて自己紹介した。

「皆さん初めまして山城健二と言います。ウェインさんに召喚されて話し相手とかされてます」

「君もウェインに振り回された1人な訳だ」

 キースさんがそう言うとみんな笑いが出た。

 みんなウェインさんの事で色々あるのだろう。

 俺は食事を取りながらみんなと楽しく談話した。

 みんな人柄がよくウェインさんの事を考えている部分が見えてきた。

「しかし君もウェインの話し相手なんかされて大変だね。あいつ自分勝手なところあるから山城君のこと考えてないでしょ?」

 ノヴァさんに言われて俺はへこんでしまった。確かにそれが原因で俺の世界、家に帰れない部分はあるからだ。

 そもそも俺はウェインさんをどうしたいんだろう?

 ウェインさんの世界と関係を持った以上この世界と俺のいた世界を行き来する日常を続けられるのだろうか?

 俺は自身の行動動機について矛盾を感じ始めていた。

 どっちにするかは俺が決めることだシフォンさん達に相談するべきことでもないだろう。

 遅かれ早かれ決めねばならないことだ。

 俺は俺の世界に退屈している部分もあるが友達らしい友達はいなかった。

 ウェインさんを友達として認めるなら、もしかしたら俺はこの世界に住むことを望んでしまうかもしれない。

 こっちの世界にどれだけ長くいても俺の世界に戻れば年齢はその時いた俺まで戻るわけだからこっちの世界に居続けるデメリットはそんなにないかもしれない。

 だが命の危険があることは確かだ。

 今はウェインさんに守られているから生き延びることが出来た。

 もしウェインさんが俺の前からいなくなったらどうしよう?

 その時俺はどうすればいいのだろう。

「山城君?急に黙り込んでどうしたの?旅の疲れが溜まっているなら客室のベッドで休むと良いよ」

 キースさんに心配されて俺はとりあえず考えるのを止めた。

「あっ、そうですね。少し疲れが残っているのかもしれません。休んできます」

「疲れが取れたらこのストーンカ国の観光案内人を呼んでストーンカ国を満喫しても良いわよ」

 ランジュさんがそういうと紙幣の束を渡してきた。

「これは?」

「この世界の通貨よ。女王記念祭に無一文で過ごすのもなんだし、そのお金を使って楽しく過ごしてね」

「あ、お金は返せませんよ」

「いいのよ。ウェインの友人なら返せとは言わないわ。好きに使って。女王感謝祭は4日間あるから気が向いた時には護衛も付けて回ると良いわ」

「ありがとうランジュさん」

 通貨の単位は解らないが大金なのはなんとなくわかる。

 このお金はウェインさんがいる時は大抵役に立ちそうにないが、俺個人が持っていてもそんはないだろう。

 紙幣は俺の世界のお土産にもなるし、大事にしておこう。

「それじゃあ俺は部屋に戻って休んできます。忙しい中ありがとうございました」

「僕たちも山城君の世界の事には興味がある。今度暇が出来たら話してくれないか?」

 シフォンさんもウェインさんと同じで異世界には興味があるみたいだ。

「わかりました。その時はその時で俺の世界の話をしますね」

「まあウェインの魔法で行けるには行けるが大行列で行くわけにも行かないしな」

 シフォンさん行く気満々だったんだ。

 とりあえず部屋に戻って休むことにした。

 城内を歩いているとメイドさんや偉そうな服を着た貴族風の人が歩いていたりで場違い感があってなんか恥ずかしかった。

 部屋のドアを開けるとメイドがベッドメイキングをしている最中だった。

「申し訳ございません。ただ今ベッドメイキング中ですのでよろしければ外に出てもらえませんか?」

「あ、すいません。すぐに出ます」

 メイドに言われて仕方なく城内をまた歩くことにした。

 暇だし城の図書館とかで時間を潰そう。

 衛兵に図書館の場所を聞くとその場所に行った。

 奥にある部屋の大きな扉を開けるとたくさんの書物が並んだ本棚と梯子があった。

 とりあえず近くにあった本を取り出した。

 本のタイトルはこの世界の文字だったがなんとなく読めた。

 というより日本語だったので驚きだった。

 もしかしたらこの世界は俺の世界の派生で出来た世界だから文字も同じなのだろうか?

 疑問を抱きつつ本を読んだ。

 本はストーンカ国の歴史について書かれていた。

 近くにあった椅子に座って本を読んだ。

 どうやらこの国は1人の青年を村長として村から始めた結果国になったようだ。

 なんと青年はジェネレーションタワーに登っていたらしい。

 ウェインさんも国が作りたいからジェネレーションタワーに登っていったんだろうか?

 いやウェインさんはなんとなくそういうことはやらなそうな気がする。

 その青年は500歳まで生きていたらしい。

 青年が死んだときにはストーンカ村は立派な城下町に変っていた。

 元々は緑あふれる豊かな村だったようでエルフが中心に多くの亜人が住んでいたようだ。

 青年はかつて旧魔王到来時代に政務を仲間に任せて闘ったこともあると書いてある。

 マナの剣と呼ばれる魔法の力の入った強力な剣を使って戦ったようだ。

 マナの剣はジェネレーションタワーで発見されたみたいだ。

 旧魔王を封印した軍団の中でも青年はかなり活躍したようだ。

 ジェネレーションタワーに登った人たちの力は凄いみたいだ。

 ウェインさんも英雄になりたくて登ったわけじゃないけど、あの塔にはそれだけの力が与えられるなら誰でも登ってみたくはなる。

 ジェネレーションタワーで永遠にさまよう者も多いとこの本には書いてある。

 そう考えるとちょっと怖いものがある。

 でも塔には1階からやり直せるシステムがあるから出れるに出れない人が多いんだろう。

 その結果さまよう羽目になるから登るにも覚悟がいるわけだ。

 ウェインさんと同じように塔を登ってみれば俺も英雄になれるわけだけど、リスクが高いから無理だな。

 他にもストーンカ国は女王制の誕生が今から200年前と歴史は建国の年度に比べれば浅いようだ。

 そうだ世界地図がないか探してみよう。

 俺は司書の人に世界地図がないか聞いてみた。

「地図はコリーア大陸のものしかないよ」

「全世界が載っている地図は無いんですか?」

「妙なこと聞くね。コリーア大陸以外から来た人間は過去にいたが、この大陸以外の世界は以前闇に包まれたままなのは子供の頃に学園で習っただろ」

「え、そうなんですか…じゃあコリーア大陸の地図を見せて下さい」

「デカいサイズの物しかないから奥の壁に貼ってあるよ」

「どうもありがとうございました」

 どうやらこの世界は世界地図がまだ未発達みたいだ。

 さっきの本にも外の大陸に出ることは禁止されているって書いてあったっけ。

 なんでも災いを呼ぶとかそんなことが書かれていたな。

 奥の壁に着いて、地図を見ると赤いピンが刺されている場所があった。

 どうやらここがストーンカ国みたいだ。

 地図には細かい村などは書かれていないが港町や城下町は書かれている。

 このコリーア大陸だけでもかなりの大きさだ。

 中国と日本を足したくらいの面積が尺度からわかった。

「あんた地図に興味があるなら現在地がわかる魔法の地図でも買った方が良くないか?ちょうど女王記念祭だから掘り出し物もあるだろう」

 さっきの司書の人が話しかけてきた。

「そうですね。地図くらいは持っておいて損はないですしね」

「あんた冒険者って感じだけど地図の事も知らないなんて珍しいね。今までどうやって冒険してきたんだ」

「仲間の人と付き添って旅してました。地図は持ってなかったと思います。その人が道を記憶してたみたいなんで」

「なるほど、道理で知らないわけだ。城の客人みたいだし護衛付けて今のうちに買い物でもした方がいいんじゃないの?」

「明日にしようと思います」

「毎年女王記念祭は色んな所から商人がやってくるから地図1つでもいろんな種類のものがあるよ。他の大陸が一部書かれたレアなやつもあるらしいけど、ほとんどが偽物って話だしね」

他の大陸に行くことは禁じられてるのに行く人もいるんだ。

どうなってるんだ?緩いのかきついのかわからずじまいだ。

 やっぱりこの世界はいい加減な部分があるな。

 そろそろベッドメイキングも終わった頃だし、戻ろう。

 俺は司書の人に一言お礼を言って部屋に戻った。

 部屋は綺麗になっていたので風呂に入ってその日は新品のシーツに包まれてゆっくりと寝た。

 今まで野宿が多かったのでベッドのふかふか感は最高だった。

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