第25話

 誰よりも早く起きた朝。

 俺はキャンプ場から草原地帯へ出る。

 少し先は作業の痕があった血なまぐささはあるものの、良い風が吹いていた。

 ウェインさんとラーズラースさんのテントはまだ閉まったまま、俺は草原から寝転がり青空を見上げた。

 空を見るなんて何年ぶりだろう。

 昨日の光景が思い出されるが、忘れることにした。

 ウェインさんの魔法でお風呂を沸かして血生臭さは取れたけど、あの肉を料理で使うのは抵抗があるなぁ。

 この世界の人達はみんな食べているのだから当たり前の光景なんだろうけど、やっぱ殺したモンスターを食べるのはどうにも慣れない。

 もちろんこの世界の人の食材すべてがモンスターというわけでなく、一部なのだからそれは納得できる。

 でもやっぱ理解できないんだよなー。

 モンスターだぞ?あれを料理して食べるって何かカニバリズムみたいに思えてしまう。

 いや、例えるなら育てた鶏の首を絞めて今日の料理に出るくらい嫌な気持ちになってしまう。

 ちゃんと食べた方がウェインさんにとっても好感度が上がるのだろうか?

 きっとカレーをご馳走した時のようにこの世界で料理を披露したいんだろうか?

 ウェインさんならそういう感情はあり得そうだし、それが異文化交流による友情の証になるのだろう。

「山城、起きていたのか」

 ウェインさんがテントから出てくる。

「あ、ウェインさん。おはようございます」

「今日は腕によりをかけて昨日倒したモンスターで料理を作ってやろう。異世界でのカレーのお礼だ。楽しみにしておくが良い」

 予想通りの嫌な解答が返ってきた。

 やっぱり友情の異文化交流料理ショーだったのか。

 俺はゲンナリした気持ちでその料理を待つことになった。

 前食べた時は普通に味わえたのでそれがかえって残酷なのだ。

 あのグロイモンスターから普通の旨みというのが何とも言えない気持ちになる。

 旨い事は旨いのだが、元の見た目があんなグロイのだから素直に喜べない。

「今日は厄日だな」

 俺は空を見上げてそうぼやいた。



 ウェインさんとラーズラースさんの作った料理は元々の見た目を忘れればおいしそうな料理に見えた。

 レオンハルトさんを含めて4人で仲良く食べることになった。

「山城、その肉は何か知りたいか?」

「いえ、いいです」

「あら、じゃあその干し肉とかしりたくない?」

「いえ、結構です」

「おお、やっぱりワーウルフの肉は…」

「もうみんな黙って食べましょうよー!」

「山城、何故怒るのか?」

 疑問に思うウェインさんに俺はさっさと食事を済ませた。

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