第24話
道中、戦闘があった。
相手はワーウルフ、オーク、トロル、メイジゴブリン、ローパーの群だった。
ウェインさんがちょっとずつ倒してくれて、俺とレオンハルトさんとラーズラースさんは防衛に集中していた。
ウェインさんの強さは人間の強さをはるかに凌いでいた。
飛び散る魔物の肉片に俺とレオンハルトさんとラーズラースさんはただ驚くばかりだった。
敵にしたくない。
俺が生まれて初めて抱いた恐怖の感情だった。
※
血と肉片が飛び散った戦場でウェインさんはいつもどおりの明るさを出す。
それが少し怖かった。
「山城。言っただろ。ここは魔物が多いからと」
ウェインさんが俺に近づく、レオンハルトさんが先に声を出す。
「凄い!さすが闘神ウェイン!俺はただ圧倒されるばかりでしたよ」
「そうか。山城もそう思ったか?」
「え?あっ、は、はい…そう思いました」
半ば強制で答えた返事だった。
「闘いは初めて?」
ラーズラースさんが俺に問いかける。
「はい、まだオークとの戦いとこれだけしか体験してません」
「最初は怖いものよ。そのうち慣れてくるわ」
ラーズラースさんはそういって俺の頭を撫でた。
そしてそのまま抱きしめられた。
後頭部に胸の感触がした。柔らかかった。
女性特有の甘い匂いがした。
ウェインさんと目があった。
今のウェインさんは可愛いけど、怖かった。
それは地面の肉片が証明している。
これからこういうことが続いていくのだろうか?
これが自分のいる世界とウェインさんのいる世界の微妙な違い。
命のやり取りがある世界。
この世界の常識。
俺の世界の非常識。
俺とウェインさんは友人になれるのだろうか?
こういうことも許容しながら友人になれるのだろうか?
そんなことを満月の夜に思った。
月は雲で濁すようにところどころ隠れていた。
俺の槍は結局どのモンスターとも戦わずに輝きを増していた。
「ここでは血なまぐさいレオンハルト殿食料を調達したいので手伝ってくれ。ラーズラース殿は結界を貼っておいてほしい。山城。聞こえているか山城?」
「あっ、はい」
「そこらのモンスターの肉片を今から出す異空間に入れるのを手伝ってくれ」
「わかりました」
俺はウェインさんに言われた通りに周りに散らばった肉片を異空間に入れていった。
これが食料になるのかと思うとおぞましい気もした。
これからの旅にこんな肉片集めのようなことが繰り返されるのだろうか?
今日はそんなシリアスな事を考える夜だった。
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