第16話

 怪我がエリザベートさんの治療魔法で和らいだ時にウェインさんが駆け寄ってきた。

「どうだ山城、これが戦闘だ」

「思ったよりハードすぎてついていけなかったですよ。っていうか俺興奮しすぎてキャラ変わってた感じしましたよ」

 俺は横に寝転がりながらウェインさんにそう話す。

 エリザベートさんはアルフレッドさんの治療魔法に専念していて話すことは無かった。

「攻撃的になるのが戦闘だ。仕方ないだろう」

「そうですよね。ウェインさんの世界では毎日がこういう戦闘が絶えず行われているんですか?」

「そんなことはない。普段は村に結界用の電灯が貼られている。周りを見渡す呪文を戦闘中に唱えていたら電灯が切れていたようだ。おそらくそれが原因でモンスターが入り込んだのだろう」

「そうだったんですか。っていうか背中痛くて血が出てますよ」

「エリザべート殿の治癒魔法で致命傷にはなっていないはずだ。立てるか?」

 ウェインさんは手を差し出す。

 俺は右手で掴んで起き上がる。ウェインさんに抱きかかえられる。

 胸の感触が柔らかかった。

 しばらくして村長と村人たちが集まって、ウェインさんがオークが出た原因を話すとすぐに魔よけの電灯が代えられてモンスターの危険性がなくなった。

 この世界は緩いけど厳しい所もある。

 俺はそんな事を思いながらウェインさんに担がれて、宿屋まで戻った。

 少女に担がれる男子ってのも情けない構図だが、実際ウェインさんはとても強かったから仕方がなかった。

 宿屋に来た医者に最低限の治療をしてもらいその日はゆっくり安静して寝た。

 今日は教会で美人にあったら、次は情けなさそうな自警団の少年に会い、村に出没したオークの群れに背中を叩かれて戦闘になった。

 ハードな普通では過ごせない1日だった。


 ※


 アルフレッドさんはかなりの重症だったが、翌朝には怪我が治っていた。

 エリザベートさんは朝にはアルフレッドさんと一緒に宿屋にきていた。

「ギュフイまでの旅がこれから始まるんですよね?」

 俺はウェインさんにそう聞くとウェインさんはこう答えた。

「もちろんだ。今からモンスターもいるが、ギュフイまでの旅を始めたいと思う。山城、エリザベート殿、そしてアルフレッド殿よいか?」

「はいもちろんですわ」

「僕もあまり役には立ちませんが行きたいと思います」

「俺もです」

「それでは行こう」

 そういうと村長に見送られて。俺とウェインさん、エリザベートさんにアルフレッドさんはギュフイの方角に目指して歩いて行った。

 長い旅が始まる…俺はそう思った。

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