第5話
俺がウェインさんにゲームを教えてから数時間後。
ウェインさんはゲームではあっさり今の俺を超える力を身に着けていた。
「すごいですね。才能ありますよ、ウェインさん」
「山城の教え方が上手かったことと、このゲームは反射神経と判断力が問われるゲームだから私にも出来ただけのことだ」
「いえいえ、すごいですよ。こんなに呑み込みが早くて実戦でこんなハイスコア出すんですから。見てください1位ですよ。1位のトロフィー貰ったの感激ですよ」
「喜んでくれて何よりだ。山城もそろそろ風呂に入ったらどうだ?」
「そうですね、ウェインさんはこのままゲームしてますか?」
「いや、どちらかというと本や漫画が読みたい」
「じゃあ本棚にあるの全部読んでいいですけど、散らかさないでちゃんと元の場所に戻してくださいね」
「承知した」
ウェインさんが変わった返事をした後に本や漫画を読んで大人しくしていた。
俺はさっさと風呂に入ることにした。
※
風呂から戻ると俺はある疑問をウェインさんに告白した。
「ウェインさんって便利な魔法が多いですよね。それだけ持ってるのになんで塔からは脱出できないんですか?」
「出ることはできるが、1度出ると1階からやり直しになるが、異世界なら別だ」
「きついのか緩いのかわからない塔ですね。なんて名前でしたっけ?」
「ジェネレーションタワーだ。人間が生まれる前から建てられている神が作りし巨大な塔だ。頂上に登りしもの神に等しい力と知恵を得られるが危険も伴うと昔から言われている」
「無駄に壮大な名前の塔ですね。しかも1000階登って、力を手に入れる時にも危険があるんじゃ登りたくないですよ」
「私は登らねばならなかった」
「何か理由があるんですか?」
「ただ登ってみたい。そう思ったら登っていた」
「………そうですか」
そんな理由で挑戦するんだ。
「あれ?でも英雄になりたいとか言ってませんでしたっけ?」
「それもある。強くなりたかった」
「なんとなくで、ですか?」
「無論だ」
適当な人だな、ウェインさんって…。
「闘神って呼ばれてたのはどういう理由でですか?」
「他の者より力があり、恐れられていたからだ。1000対1で勝ったこともある」
「すごいですね」
これで1000人側なら笑うとこだが、どうやらそうでもないのは確かだ。
「仲間の人って今でも国にいるんですよね?えーと、なんて名前だっけ?」
「ストーンカ国に多くの仲間がいる。今でも政治をしているだろう」
「国の方は心配じゃないんですか?」
「あいつらは集まれば結構強いから安心だ」
っていうか、なんとなくで塔登って仲間ほったらかしって人としてどうなんだろう?自由な人だな。
「塔を登って頂上に着けば今よりも強くなる。そうすれば仲間も国も喜ぶだろう」
「そうですね。こんなところでゲームしたり、カレー食べたり、漫画読んでる場合じゃないと思うんですがそれは?」
「手厳しいな。考えてもみろ。990階という長い塔を登って、その間人と話をする機会は少なかったのだぞ?話したくも、寄り道したくもなる」
「それはそうかもしれないけど」
「とにかくこういう気分転換と会話は大事なんだ。わかったかい?」
「アッハイ」
お互いちょっと微妙な空気が流れたが、ウェインさんは気にせずに漫画を読んだ。
そこは帰ってほしいっと思うのだが、魔法の効果で今日は深夜4時半まで居るのでそうはいかないだろう。
「そろそろ10時ですし、俺は寝たいんですが…」
「山城、ネットにもこういう小説があるのか?」
「何です?いきなり」
「いや山城が寝ている間小説をネットで読んでみたいのだが、駄目だろうか?」
それで大人しくなるのなら俺も寝れるかもしれないが、なんか修学旅行の寝たら駄目みたいなテンションのウェインさんをみるとこうするしかないような気もした。
「ネットの小説家になろうってサイトにアクセスしますからそれで読んで下さい。変なサイトに飛ばないでくださいよ」
「任せろ、このマウスでクリックすればいいのだな」
「ええ、長いの読ませれば大丈夫でしょうね。最近は小説家になろうってサイト以外にもカクヨムってサイとも出ているんですけど…あそこはまだ作品が少ないからなろうでいいですね?」
「うむ、ところで小説家になろうとはどういうサイトなのだ。小説がたくさんあるのか?」
「ありますねぇ。それこそ作品数で大きな図書館が出来るほどには」
「うーむ1日にでは無理そうだな」
全部見れたら超人だよ、ウェインさん…。
「で、やり方とどこをクリックするかですけど…」
俺は簡単に解りやすくクリックとアクセスを教えた。
書き込みはしない方が良さそうな気がしたので教えなかった。
「ところで山城のお薦めはどの作品だ?」
「このランキングにある奴を最初は読んだ方が解りやすいかと思います。他の作品はその読んでる作品の下にあるリンクで読めるようになりますからね」
「うむ、ありがとう」
「どういたしまして、それじゃあ俺は明日は学校なので寝ますね」
「どこの世界にも学校はあるのだな」
「あるみたいですね。おやすみなさい。電気消しますけど、そのスタンドの電気はつけたままにしておきますから」
これでこのまま読み続けて、明日の朝には居なくなっているだろう。
それで今日は終わりな訳だ。
「おやすみウェインさん。また今度暇なときにできれば夜とかに来てくださいね」
「ああ、おやすみ山城。できるだけそちらの時間に合わせてくるようにする」
俺はさっさとベッドに入って、ぐっすりと寝た。
※
朝になり、起き上がる。
鳥の声がチュンチュンと鳴いている所を見るとかなり早めに起きたようだ。
「んー、良く寝た」
「おはよう山城」
「えっ?な、なんでいるんですか?」
「小説の続きが気になって帰れなかった。すまない」
さわやかな朝はウェインさんの存在とセリフで無効化された。
こういうオチかよ…っと俺は朝から脱力した。
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