第4話
ウェインさんを俺の部屋に呼んで動かないように漫画でも読ませることにした。
「山城、私の世界ではホットドッグというものがあるんだが、この漫画でもそれはあるから山城の世界でも存在するんだな」
「カレーは無いのにホットドッグはあるんですね」
ウェインさんの世界は相変わらず滅茶苦茶な気もする。
ちなみに読ませているのは現代ものの料理漫画でウェインさんは楽しそうに読んでいる。
「この漫画は私の世界には無いが面白いものだな。こういう漫画がたくさんある店は本屋だろ?それぐらいは私の世界にもある」
「そうですか、あとは漫画喫茶っていう漫画とパソコンが置いてあるお店もありますよ」
「それは楽しみだ、今度行ってみたい」
次に来ること前提ですか。
「行くとお金が結構かかりますよ。この世界の本に興味があれば図書館に行けばいいと思いますよ。漫画以外の本とかありますし」
「図書館なら私の世界にもあるが村の図書館は村長の家くらいしかないんだ」
「それは不便ですね。まあ、市の図書館なんて利用する人は少ないから同じようなものかもしれませんね」
俺はちょっといい加減な答えを出した。なんかいちいちチュートリアルの人みたいに話すのは面倒な気持ちになった。
「山城この漫画の続きはあるのか?」
「あ、それが最新刊なんで次巻は今年の12月まで出ませんよ。作者がいて、連載っていう執筆活動をしているので本は完成した時にしか出ませんし」
「そうなのか、残念だ。この漫画でカレーを見たのだが、私の世界で言うシチューに似ているな。というかこれはシチューだな」
ウェインさんの世界にもシチューはあるんですね。ならなぜカレーが無いのか謎は深まるばかりだった。
「でもカレーとシチューは俺の世界では分けられてますよ。だからカレーはシチューではないです」
「シチューをご飯にかけているだけだからカレーであろう」
「いや、味とかが違うんですよ。まあ、食べてみればわかりますから」
「もし旨かったら私の世界にもレシピを広げよう」
今この瞬間異世界同士の文化交流が成立した気がした。
「健二、ウェインさん夕食出来たわよー。降りて来なさい」
母さんの声が聞こえたので俺はウェインさんと居間の食卓まで移動した。
「カレーは本当にシチューと違うのか?」
「今に解りますよ」
ウェインさんはカレーを食べて大満足だったようで、母さんにレシピを頼んでいた。
っていうかカレーのレシピ変わってもルーとかはウェインさんの世界にあるのかと聞いたところ。
「無ければこの世界からルーを1つ買えば魔法で複製が出来るから安心だ」
と、相変わらずとんでもないことを言っていた。
「カレーをそのまま複製すればいいのでは?」
「それでは面白味がない。材料と作り方を広めれば各国でアレンジが効いて色々な味を楽しめるだろう」
ウェインさんはどうやらカレーを自分の世界で広めてとことん楽しむつもりだ。
「山城の母君。こんなに旨い物を作ってくれて感謝する」
ウェインさんは深々と頭を下げるので母さんは戸惑ってしまった。
間がもちそうにないので俺はウェインさんを自分の部屋に戻した。
「そんなに旨かったのなら今週はカレーばっかりってのもいいわね」
「母さん、それは流石にくるものがあるから止めてくれ」
※
俺は自分の部屋に戻るとウェインさんに漫画を渡して、外に出ることを避けようと努力した。
流石にいきなり外は色々と困るし、ウェインさんがうっかり街中で魔法を使えば偉いことになりそうだから対策も考えないと行けなかった。
ウェインさんは漫画を読みながら、くつろいでいる。
俺はコンビニで買った夕食を居間の冷蔵庫に閉まって、お風呂の準備をした。
「ウェインさんシャワーの使い方とかわかる?」
「山城、風呂場を見た限りでは私の世界の大都市にある風呂と変わらない構造だった」
「大都市以外の風呂場はどうなってるの?」
「シャワーが無いだけで他は変らない」
「それはそれでちょっと不便ですね。でも使い方わかるならいいです着替えは俺のジャージになりますけど我慢してくださいね」
「そうか、ありがたい。山城、一緒に入るか?」
「いや俺ホモじゃないんで」
「男同士は風呂で腹を割って話すのが1番だと親父に教わった」
「いや、でもうちのフロ狭いんで、今度ウェインさんのいる世界で大浴槽とかのある宿屋でやりましょう」
「ふむ、仕方ない。ではそうしよう。先に入ってくる」
「どうぞどうぞ」
ウェインさんが部屋から出た後にちょっと心配になったので風呂場までついてきて、タオルと着替えを渡して部屋に戻った。
今のうちに学校の宿題をやらないとまずいので、机について宿題を解いた。
※
「あー、終わった」
宿題が終わり、明日の時間割の科目を鞄に入れて、部屋の小型テレビにゲームを差し込んで電源を入れた。
ここまでいつも通りの日常なのだが、部屋にウェインさんが戻って来て、一気に冷めてしまった。
「山城はテレビが好きだな。何の番組を見ているのだ?」
「これはゲームって言って、番組じゃないです。自分で遊ぶ番組って言えばいいのかなー。たぶん…自分でこうやって操作して遊ぶんです」
「ほー、何やら銃で人が撃たれているが戦争を遊んでいるのか?いかんな、不謹慎だぞ」
「これはゲームなので架空のものですから別にいいんですよ。俺の世界ではそういう決まりになっています」
「そうなのか、なるほど訓練をしていると思えばいいのか」
「いや、訓練じゃなくて遊びですから…」
「私も遊んでみては駄目か?」
「いいですけど、今はオンライン対戦なのでちょっと待ってくださいね。フレンド…同じゲームをしている友達に抜けるように言いますから」
「このゲームにフレンドがいるのか?」
「えーとなんて言えばいいのかな…」
俺は出来る限り詳しくゲームの説明をした。
「なるほど遠くで連絡が取れるだけでなく、同じ遊びができるとはすごい世界だな」
ウェインさんは何やら関心していた。
「まずはチュートリアルモードで遊んでみて下さい。それからゾンビモードのイージーで遊べば慣れ始めるはずですから」
「ふむ、わかった」
そういえばこうやってリアルでゲームを一緒にする友達っていたっけ?
いや、いなかったな。
俺はそんなことを思いながら、ウェインさんにゲームを教えた。
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