第3話

 ウェインさんがコンビニに行きたいと言うのを何とか言いくるめて家に留守番させた。

 俺は今コンビニで夕食を買った。

「山城、山城…コンビニというのは綺麗な場所だな」

 ウェインさんの声が聞こえたので探した。

「今は姿を消せる魔法を使っている。すぐに魔法を解こう」

 そう言うとパッと姿を現したウェインさんはさりげなく俺のシューズも借りてコンビニで物色している。

「なんで来たんですか?家で大人しくしてくださいよ」

「すまない、つい興味が湧いてしまってな」

「ついじゃないですよ。もう家に戻りますからあんまりウロウロしないでください」

「ふむ、珍しいものが色々あって面白い店だなコンビニというのは」

「まあ、便利ですけど面白いわけではありませんよ」

「そうなのか?」

「そうなんですよ、じゃあ帰りましょう」

「家まで瞬時に戻れる魔法があるんだが…」

「絶対に使わないでください、お願いします」

「わかった、なんかすまない」

 そのまま俺はウェインさんとコンビニを出た。

 みんなコンビニですげーチラチラ見てて、恥ずかしかった。

 ウェインさんは帰り道をキョロキョロとまるで田舎から上京してきた人みたいにあたりを見回している。それを見ていると俺も上京したら大きくなって立派になって金持ちになるだ…なんて絶対に思わないが、ウェインさんは異世界に興味が尽きないんだろうなと思った。

「そんなに珍しいですか?」

「ああ、建物ばかりで森も無い無機質な世界だな。あれは車というのだろう?私の世界でもあるがあんなデザインではない」

 あっちの世界にも車あるんだ、意外だなてっきり馬車とかしかないかと思っていた。

「飛空艇はないのか?これだけ車が走るならあってもおかしくないが」

「いえ、代わりに飛行機っていう空の乗り物がありますよ」

「ふむ、今度乗ってみたいな」

 乗ってどこへ行くつもりですか?ウェインさん…。

「お金が凄く掛かりますし、パスポートとか発行しないと乗れませんよ」

「私のいる世界ではお金さえ払えば乗れるぞ」

 ウェインさんのいる世界ってやっぱ酒もそうだけど、色々と緩いな。

 そんなことを言っている内に家に戻った。

 家に帰ると母さんが仕事から戻っていた。

「あら、お友達?」

 いよいよ本番な気がしてきた。ていうか帰るのが予想より早くてちょっと困った。

「ああ、うん。海外の友達なんだ」

「あんたにそんなワールドワイドな一面があるとは母さん思わなっかたわ」

「ネットで知り合ったんだ」

「山城、ネットとは先ほどのあの箱のことか?」

「ウェインさん、少し黙っててね。あんまり世間に疎いとアマゾンの部族民並の人になっちゃうからね」

「ふむ、そうか。私は部族民でなく闘神と呼ばれる…」

 話がややこしくなりそうなので、俺はあらかじめ考えていた設定どおりに母さんに説明した。

「アメリカから来たウェインさん。ちょっと特殊な環境にいた人で世間に疎いんだけど、日本のことを勉強しにこっちに来たんだ。今日ホームステイしている家に帰るんだけど、なんか泊まることになってね。母さん、ウェインさん泊めちゃダメかな?」

 我ながら良く考えた設定だ、なんとかなってくれ。

「あら、そうなの。別にいいけど。健二の部屋に泊めるなら問題ないわよ。よろしくね、ウェインさん」

「ウェイン・アースランドだ。どうぞよろしく」

 年上にこの堂々と名乗るのは流石だった。

「今日はカレーなんだけど、健二とウェインさん食べますか?」

「山城、カレーとはなんだ?」

「ああ、カレーってのはご飯にかける旨いやつです」

 俺はウェインさんに適当なカレーの説明をした。

 これくらいは見ればわかるだろう。

「ミノタウロスのステーキより旨いのか?」

「ミノタウロスの肉を食べたことないので解りませんが、国民的な料理の1つでカレーは旨い部類に入ると思いますよ」

「そうか、楽しみだ。山城の母君、カレー楽しみにしています」

 なんつー変な言い方だよ。

「ウェインさん、とりあえず俺の部屋に戻りましょう」

「山城、あの箱に馬がたくさん走っているが。あれはなんだ?」

 質問と興味の尽きない人だな。

「あの箱はテレビって言って遠くの出来事を移せる機械みたいなもんです。で、あの馬は競馬ですよ、レースっていえば解りますよね」

「レースか、スライムレースを思い出すな。テレビ…ネットと同じで便利な機械だな」

 ウェインさんは感心しつつもテレビをガン見している。

 よっぽど珍しいんだろうな。

「あらウェインさんのアメリカでは競馬とかもあるでしょう?スライムレースって何かしら?」

「か、母さん、これはウェインさんの高度な冗談だから実際にスライムレースなんてアメリカにはないよ。ジョークがダメな人なのにジョークが好きなんだよ、ウェインさんって」

 俺はとりあえずごまかすことにした。

「そうなの?」

「そうなんだよ」

「スライムレースというのは中々面白い競技でな…まずモンスターであるスライムを」

「ウェインさん、話をややこしくしないで早く部屋に戻ろう」

 俺はウェインさんを連れて部屋まで戻した。

 これが深夜4時半まで続くのだから困る。

 大人しく夕食を済ませて、部屋でじっとしていればいいのだが…。

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