第12話

「・・・」


「お前の言いたいこと・・」


「なんとなくだけどわかってきた気がする・・」


ミサ「ほうほう」


「まだ全部じゃないけど、なんとなく・・」


「・・・」


「お前と話してるとなんか・・」


「俺とあいつが似てるような気がしてきた」


ミサ「あいつって多陀君?」


「あぁ」


ミサ「聞こうじゃないか」


「言わせるのな」


ミサ「声に出して言うことにはちゃんと意味があるのだ」


「・・・」


「俺は学校で一人になってから」


「自分では何もしようとしなかった」


「たぶんそれ以上嫌な思いをしないように諦めたんだな」


ミサ「その時は意識してはいなかったけどってこと?」


「あぁ、その時はそんなこと考えもしなかった」


「俺は何も悪くない」


「あいつが悪い」


「そしてそれに流された周りの奴らも悪い」


「そんなことしか考えてなかった」


ミサ「・・・」


「たぶんあいつも同じだったんじゃないか」


「父親が悪い」


「父親さえいなければ・・とか」


「もしかしたら母親のこともそう思ってたかもしれないな」


ミサ「うん・・」


「俺はこれ以上嫌な思いをしないために周りと関わることを諦めた」


「あいつはこれ以上嫌な思いをしないために周りと関わろうとした」


「やり方は違うけど、どっちも自分を守ろうとしたんだ」


ミサ「そうだね」


「あいつ言ってたよな」


「自分は自分のために周りといる」


「周りの奴も自分のために俺といるって」


ミサ「うん、言ってたね」


「俺は自分のために周りといることをやめて」


「周りも自分のために俺といることをやめた」


「俺とあいつは正反対のようで」


「結局自分のことだけ考えて自分を守ろうとしてたのは同じだったんだ」


ミサ「・・・」


「そして本当は自分が求めたものが手に入らなくて」


「それでいいって割り切ろうとしてたけど結局できなくて」


「それならいっそのこと楽になりたいと思ったんだ」


「俺もあいつも」


ミサ「たしかに似てるね」


「俺もあいつもきっと周りにこうして欲しいって勝手に期待して」


「自分のことをわかってくれる奴が周りにいないと思って」


「生きてるのが嫌で楽になりたいと思って」


「でもどこかでまだわかって欲しいって思ってた」


ミサ「君を見つけた時僕はそう感じたよ」


「そうだったのか・・」


ミサ「だってなんだか迷ってるような」


ミサ「ためらってるような」


ミサ「そんな感じがしたから」


「そういえば最初にお前に助けられた時そんなこと言ってたな」


ミサ「うん、言ったの覚えてる」


「俺は周りにわかってもらえず生きてるのが嫌になって」


「楽になろうとしたんだ」


「なんか全部自分のことばかり考えて」


「『こうして欲しい』とか」


「『こうしてくれなくて嫌な思いをするなら楽になりたい』とか」


「そんなことばかり思ってたんだな」


ミサ「ふむ・・」


「今日の多陀の件があって」


「似てると思って自分のことも振り返って」


「さっきお前が言ってた行動の理由の欲求って方は」


「少しだけわかった気がする」


ミサ「・・・」


「ただお前が言ってた義務って方はまだ全くわからないけどな」


ミサ「・・・」


「ま、お前が人を見てきてそう思うようになったんなら」


「お前といればそのうちわかるようになるかもな」


ミサ「・・・」


「どうせお前といるとこれからも色々なことがあるんだろうし」


ミサ「・・・」


「・・・」


ミサ「・・・」


「寝てるんかいっ」


ミサ「zzz」


(全く人が真剣に話してるっちゅうのに・・)


(あーーーーー!!)


(そういえばこいつ今日授業中もずっと寝てたな!)


(しまった!こいつ寝てる間なら考え事しててもばれないんだ)


(・・・)


(ま、いっか)


(なんか考えてることが伝わるとか以前に)


(こいつには何でも話せてしまう感じになってるしな)


(こいつたまに鋭いこと言うけど)


(寝顔は無邪気じゃないか)


(スマホで撮って明日みせてやろ)


(・・・)


(わ、写ってない)


(そら写らんか・・なんか恥ずかし)


(何やってんだ?俺・・)


(こいつが寝ててよかった・・)


(寝てなかったらこんなことしてないけど・・)


(さて、俺も寝るか・・)


(・・・)


(・・・)


(俺はまだ・・)


(・・・・・)

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