??_外側_02

※「少し時間が空いたようなので念のためもう一度。外側という名前のお話は飛ばした方が良い。少し間をあけてすぐには見えないようにしておくから」










「ある見方として純粋な物語にしたいなら、“外側”のタイトルを持った箇所は飛ばした方が良い。だったかしら」



「……そうだった。別に私がそうしたわけじゃないけれど基本的な紡ぎ方ができないのね。時系列としては彼女がその場所で最後の箱がある部屋に入る直前になる。そして少しだけ位置をずらしたのは、彼女がそう指示をしたから」


「彼女は1つ確認をして、その答えを聞いて私に1つお願いをした」


-- 物語の一番外側という言い方で、あなたと私で想像するものが重なるか。重なるのであればあなたはそれに相談できるか。


「私は、重なる部分はある。けれど後半は回答できないと答えたわね」


「“できない”という言葉に照準を合わせた彼女は、けれども自身に忠実に、次へと言葉を進めた」


--


「お願いの方は申し訳ないけれど私の意向で私にしか読めなくしたわ。意向なんて私が使う言葉になると思っていなかった。さあ、あとはお願いね」



 本当は彼女が遊び心で作った「ここでの換算で735ヨタバイトしか重みのない部屋」で他愛のない時間を過ごしたことが記されるべきだったのかもしれない。あるいはそれは別のところで記されるのかもしれない。もう一度ここへ招かれた客人は一旦ここで交わしたことは覚えていないでいられることを確認し、彼女は彼女で一旦ここで役目が済んだことを(どこか嬉しそうに)言うと、片方はいくつかの錠を解いた。

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