07_SandBox_04_
フェードアウトした意識は別のところで再構築された。
頭部まで覆う襤褸切れに身を包んだ人影が一つ、かつて胸像だったものを見つめている。私はやはり少し高い位置から人影を見るように視点だけを貰い、身体は与えられていない。
砂に埋もれた石材の床と僅かばかりの柱群が世界の背景として大雑把に描写再現されていく。荒漠な砂の海、長い時の流れ、微かな文明の跡。
顏の部分は欠けており、脆く崩れた石の塊が女性の上半身を象っていることは近付いて注視したところで気付けないかもしれない。だが、人影はそれがかつて何であったかを知っていた。元は翼を持っていた。今それが悲しい表情をしていることも分かっていた。
人影は崩れた胸像に向けて力を込める。すると胸像が元とは反対の方角を向いた。それはやがて日の昇る方角であると私にも分かった。
その人影の表情を窺おうと視点に意識を向けた瞬間、場面空間がそれを避けるように次へと向かう。
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