第33話「もう言葉が出てこない」支離滅裂…。
5月13日
ちょっともう、涙も出てこない。
ニャンコがベッドに横たわったっきり、口からもオシモからも水滴をたらたら。
トイレにも自分で行けなくなっちゃったの。
しかも。
ボイスドラマ作ってたら、よろりら、として降りてきて、トイレに入ってバタッ……。
うるさかったか? ごめんなさい。
でも今、あなたに死なれたら、絶対作れなくなると思って。
夕刻になって動物病院の戸を叩いたけれど、なんでも、猫にも個性があるから、触られるのが嫌な猫もいれば、うちみたいに全然平気な子もいるそうな。
今日、衝動的にワーッとわさわさ触ってしまったけれども。
そういうことはしないほうが良いらしい。
体力的に。
☆☆☆
同日。
わたくしはもう、ニャンコを心の中で何度も殺している。
今事故があったら、つぶれて血まみれに、とか。
ほうっておいたら、眠るようにみまかる、とか。
いっそ病院に入院させたっきりでいたら、とか。
みんな自分が傷つかなくていいための妄想だ。
自分はすごく、残酷なんだと思う。
もうニャンコは酸いような、すえたような、獣独特の匂いを発していて、もう毛づくろいをして取り繕う真似すらしない。
末期だ。
ソルラクトという点滴は、ふっとい注射針で肩甲骨あたりに打たれるんだけど、うまくいかないとしとしと出てきてしまう。
猫にこんなに気をつけねばならないなんて、ちっとも想像だにしなかった。
死んだように眠る、という表現はあるが、今、彼は死にそうに眠っている。
明日生きてるかわからない。
こんなときに、なぜわたくしの顔は鉄面皮のように、ぴくりとも反応しないのだろう?
心が死んでしまったのだろうか?
だとしたら、今死んでいこうとしているニャンコが、わたくしの心なのだ。
ズタズタだ。
☆☆☆
同日。
正直、自分の書いてることは、人によってはうるさいし、いい加減しつこいのだろう。
まあ、わたくしも、折れそうな心を立てなおすために、三日に一度は神頼みをしているし、関係ないがボイスドラマを完成させようと試みている。
材料はほぼ整っているし、フリー素材のサイトも日々充実しているから、去年よりよほど条件はいいはずだ。
なに、ちょっと期待していたのとは違うデキになりそうだ、というだけのことだ。
#1~#6まで、区切り区切り、やってきたが、つなぎ目をどうする気なのか自分でもさっぱりわからないという……。
関係ないと書いたが、実は関係がある。
ニャンコが死ぬとニャンコの型の穴があく、という噂だが、ほんとうに自分は耐えられるのか、自信がなくなってきている。
なにかに夢中になってる間は、あれこれ考えられるので気分は良好。
即興で歌なんて歌ってしまうほどのんきにやっている、が。
ふとふりかえると、そこに死にかけた猫がいるのだ。
枯葉のようにぼろっぼろになって、ベッドに倒れている。
地獄のようだが、わたくしは幸せだ。
ニャンコを看取れるのだから。
地獄こそが、そもそもわたくしの住まう、居場所ではないか。
彼はわたくしの前に現れた天使なのだ。
現世に繋ぎとめようとしてはならない生き物だ。
つらい、もう言葉が出てこない。
だから、今、愛が死のうとも、わたくしは生きねばならない。
支離滅裂…。
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