第30話「誰のせい」責められるいわれはない…。
5月9日
死ぬな、ではなく、生きろ、とわたくしは言うのだが。
今のニャンコには、正直つらい面もあり、生きてみようかなと思う面もあるらしい。
今日は、おもてで剣呑な唸り声がするので、二階からガレージを覗いたら、まだまだ健康そうなキジトラが雨どいの近くにいて、そこから唸り声がする。
「ここはあんたのおうちじゃないからこないで」
と二回言って、表に出たらそのキジトラはいなくなっていた。
ただし唸り声はうちのニャンコが発していた。
雨どいのつゆに濡れつつ、ガレージの壁にへにゃあっ、ともたれて、来るな、と言っている。
「わたしだよ。大丈夫。行こう……」
とかなんとか言って、抱いて部屋へ戻した。
そしたら……ニャンコはもう、体を起こすこともできなくなっていて、横たわったきり、脚を放り投げて目をつぶっている。
これはアブナイ。
明日までもたない。
そう思って、夕方動物病院へ電話してから連れて行った。
かわりに、苦手の茶碗洗いを任ぜられたが、要領はわたくしいいから、こんなもの、ちゃちゃっといける。
そして、診察室。
灯りがつくまで待合室で、ニャンコの顔を覗きこんだり、ぼうっとしたりしていたが、注射に入ると、これがはやい。
獣医師ももう、診ていられない気持ちだったのではないだろうか?
言葉が少ない。
今日の出来事を話したら、
「(唸るのは)そりゃ近くに来てほしくないからでしょう」
「(キジトラが同い年くらいなのに、若々しいのは)そりゃ病気してないからでしょう」
「(酢をあたえても)酸っぱいから飲まないでしょう。味はなんでもいいんです。猫だから。酸っぱいのは苦手」
そして自宅に戻ったら、ニャンコ、肉球が生白い。
この子は足が真っ黒で、肉球も真っ黒なんだけど、なんだか押しても弾力がないし、跡がついて元の形に戻らない。
四本足を手で暖めてやっていたら、ようやっと点滴が回ってきたようで、肉球も弾力を取り戻しつつあった。
脱水なだけなら毎日でも点滴打ってやりたいんだけど。
母は、「毎日なんてかえってよくないんじゃない?」と懐疑的。
よくわからない、その思考。
借金してるから、文句言えないけど。
明日死んだら母のせいかも。
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