第29話「ちょっぴり不安」原因は何だろう…。

5月7日

洗濯ネットに入れた愛猫を動物病院に連れて行った。


待合室で猫を抱えたまま椅子に座り、ぼーっと丸いお鉢のような水槽のあたりを見ていた。



(そうだ……ここは、病院なんだ)



ふと、思う。


この子はもう、あぶないんだと自覚しなきゃならない。なのに。


点滴をしてもらえば、なんとかなると思いやってきた。


体重は3,3㌔から2,2㌔。900グラム減っていた。


先生が彼の腰、背中の毛をつまんで、わたくしに見せる。


皮が跡になって戻らない。脱水しきってる。


点滴してもらったところだけ、たぽたぽとふくらんでいる。



「これで、一日の必要分量の水です。この水分が筋肉に吸収されるかは腎機能が生きてるかどうかに関わってきます」



家に帰ると少しばかり元気になったニャンコにうれしさと驚きが混じる。


母は、たまに点滴を打ってやればいいさと、あきらめムードだが、腎機能が死んでしまったら、点滴すら受け付けなくなる。


たまにじゃだめだ。


そうは思えども、借金は十万を超えた。


今日は上限を十五万ときられた。


獣医師も、最近厳しいことを言わない。もう、病院側がなにかを言ってどうにかなる状況ではないのだ。


財産額が、命の値段なのだ……なおうらめしき、あさぼらけかな。(意味違う)


血の涙。

     ☆☆☆

同日。

よく実家にきて遊ぶ甥っ子二人がいる。


一人一人は確かにかわいい。


二人寄るとなるとたいへんだ。


年は二つ違う。しかしお兄ちゃんは、新入りの弟君を甘く見ている。


弟君が楽しそうに遊んでいると、わりこんできて「僕も僕も!」と言ってオモチャ横取り、遊びを邪魔してしまう。


しかし、目撃したのは二回目で、どうにも説明がつかないのだ。


弟君、お兄ちゃんの痛いとこをついてくる。


スーパーボールをしつこくぶつけられた日は、スーパーボールを。足でしつこくしつこく、けられて押しのけられたときはかかとを。


お兄ちゃんの右目にストライクさせる。


お兄ちゃん、ほっぺたを赤くして泣く。


弟君、チイチャイから、謝らない、自分は悪くない、ザマアミロという……そんな気配が少し伝わってくる。


二人ともかわいいし、わたくしをねえねと呼んで遊んでるうちはいい。


体が大きくなってから、どたんばたん、はしないでくれるよね……?


ちょっと不安である。

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