第25話「まるわかり」知らんふり。

5月3日

おいしい。


本来の味の良い意味で、最近食べ物がおいしい。


母の出してくれるご飯は、苦手なセロリですら、しゃくしゃくむしゃりといけてしまう。


普段はもっと、おーざっぱなのに……。


思って見ると、祖母が家に来てからずっとだ。


トマトは新鮮。


カレーはジンとくるスパイス入りだし、庭からとりたてのレモンも、スライスぱくり。


ピーマンのてんぷら、イワシのてんぷら、ニンジンのかき揚げ、カボチャのてんぷら。


おろした大根も、モチ麦の入ったご飯も。


みんなみんな。



「あー、おばあちゃんにおいしいもの食べさせてあげたい一心だな、きっと……」



と、わたくしなどは思うのである。


そしてなぜか、納豆を半分食べないか、と聞いてくるし。


梅干を食べないかと勧めてくれるし。


ありがたいし、知らないふりでいただいてるけど、母、結構はしゃいでるのが丸わかり。


祖母が無事でうれしいんだねえ。


うん、料理は愛情とはよく言ったものねえ。

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