第19話「びっくらしました」本当に91歳!?

4月26日


当時小学四年生の「はるかぜちゃん」アカウントで書かれたツイート激選集。


ためになりました。


猫は死ぬとき、姿をくらますのは……自分がこの世を去ったとき、飼い主が心に傷を負わないように、今まで通り暮らしていけるように、というやさしい気づかいからきているのだと言う。


だから、死にかけているときに、激励したり、触ったりするのは一番愛猫を傷つける行為であると。


彼らは、自分がいなくなることで悲しまれたりするのが、つらいのだと。


知らなかった……。


小学生のはるかぜちゃんも、ままから初めてそれを聞く。


六匹飼っていたうちの、ミラという猫が、はるかぜちゃんの机の下に入ろうとしたり、ヨボヨボしながら、姿を隠そうとする姿を記していた。


彼女にとって初めての死のにおいが、伝わってきた。



だけど、それでもわたくしは傲岸に言う。



「今、死ぬことは許さない」



と……。


死んだらわたくしは、それをずっとずっと背負って生きていく。


その覚悟で借金をして、延命治療を続けてもらっている。


姿を見られたくないのが猫の心情。


ならば、その死を胸に刻んで忘れないのがわたくしの心情。


忘れない。


泣かない。


だから、せめて無事に帰ってくるんだ!!! 相棒!

     ☆☆☆

さらにこの日。

我が家に避難してきた祖母が、今日一日元気がない。


なにか気鬱なのだろうか?


わたくしはエッセイのススメの本と『アランの幸福論』を貸して背中と肩をほぐしてあげたけれども、どれも効き目はなかったんだろうか?


彼女は初め、生年月日を西暦で言えなかった。


戦中のひとなのに、最初昭和二十年生まれと言っていたから、二十歳もサバを読んでいる。


本当は大正十四年の九十一歳だ。


しかし、日本では天皇陛下が新しくなるたびに年号が変わるから、西暦などという物が導入されたのは戦後なのだ。


だから、今の七十歳以上の人は西暦を使い慣れていない。


びっくりしました。


祖母は1945年生まれだって言い張るから、調べたら(そんなの忘れるほうが変だけど)


第二次世界大戦が終わり、ラジオで玉音放送があり、ポツダム宣言受諾、とあった。


そんな。


祖母はB29の空爆を受けて、裏の畑に飛び込んで難を逃れたという、逸話があるんだよなア。


もし終戦の年に生まれたなら、その話は嘘だってことになる。


問い詰めて聞いたら、防空壕を掘った話や、それでも恐ろしくて隣家の防空壕に入らせてもらってたとか。


近所の知り合いが防空壕に焼夷弾を落とされて蒸し焼きにされたとか。


(当時家屋に油をまいて焼夷弾を落とすのがB29のやり口だったらしい)


当時生まれたばかりのゼロ歳児が、どうしてそんな証言できるのか。


暗算が面倒で計算機を使って2016年から91を引いたら1925年とあった。


つまり、祖母は当時すでに二十歳、無意識にサバを読んでいたことになる。


いや、「西暦は戦後導入されたから」と言っていたから、やっぱり使い慣れてないだけか。


『アランの幸福論』では029の「悲しみの翼をもぎとる」とかが、印象に残ったらしい。


少しでも慰めになればなと思う。

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