第18話「結構モツもんだ」直感的にねー…。

4月25日

今日は入院したニャンコが餌を食べなくなって、具合が悪いそうなので獣医師に話を聞きにゆく。


これ以上延命治療は無駄だとか、最期まで続けますかとか、はたまた飼い主さんのそばにおいてあげて欲しいとか、そういうことになるのだろうか?


なんだかんだで動物病院も商売だから、面倒事は困るはず。


覚悟を決めなくては。


しかしどういう覚悟を決めたらいいのかすら、わからない。


ああ、わからない。

歴代のニャンコは寿命が短かったのだ。


去勢してなかったから、よその野良猫と交わったり、ケンカをしてきて顔に傷を作ってきたりして、病気になってしまったのだ。


ここまでないがしろだったのにはわけがある。


わたくしに経済力がなかった。


学生だったからである。


親にお金を出してもらえず、死ぬ間際まで病院にかかれなかったりで、五年くらいでさようならしてしまっていた。


だが、今の子は違う。


猫貯金してペットショップで買ったのよ、去勢もするしワクチンももちろん。


だから無下にしないでね、と家族に言って聞かせて、説得したのだ。


しかし……。


大切にされて十四年目。


歴代ニャンコの約三倍生きても、老衰にはかなわないのだ。


悔しいから、



「家に置いておくよりまし!」



と言って、入院期間を延ばしてもらった。


延命治療を止めたら死ぬに決まっているのだ。


光の当たらぬケージの中で死ぬのが良いか、私のそばで弱り果てていくのが良いのか、ニャンコの意思は生きてこそ。


だから、あと一週間。


治療費は二十万を下らない、と母が言うが、借金してでも治療を受けさせる! 


点滴は効いているようだ。


尿素窒素は減っている。


だが、腎機能がダメになってるため、血液を作らせることができずに、赤血球とヘモグロビンが減って貧血状態。


これで退院させても、わたくしにはどうにもできないし、尿素窒素を排出させる薬を飲ませても、餌を食べてくれないのでは回復の見込みがあるわけではない。


もう少し、点滴で栄養を摂ってもらいたい。


そしてわたくしが受け入れ態勢を整えるまで、もう少し動物病院でお世話になっていてね、と面会を申し入れた。


母が言うには、



「だいぶ落ち着いているみたい」



落ち着き払ってて、びっくりしたわ。


やっぱり、猫は狭い場所にいるのが大好きなのね。


よかった。


この病院を選んで間違いなかった。


ここで死なせはしない。


毎日神様にお祈りするし、獣医師にも想いは伝えたし、



「どうせ寿命」



と言う母の後頭部を本ではたいておいた。


大丈夫だ。


撫でてやったら、のどをゴロゴロさせて目を細めてたじゃないか。


わたくしが来たって、わかってたじゃないか。


まだまだまだまだ……生きてくれ。

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