第2話 まだ学生だから
「でも、もし中等部でその伝説を見つけられたら良いね」
「そうだね。でも幸せかぁ。どんな事なんだろう?」
「本当だね」
ゆりかの話を聞いているうちに、学院の伝説に興味を持った愛華。まだ中等部で見つけた人が居ないなら、見つけてみたいという気持ちになるのだ。その時、愛華と話していたゆりかの頭上に青色のファイルが振り降ろされた。スパンッという音がカフェテリア中に響く。
「痛ぁ・・・」
「大丈夫!?ゆりかちゃん」
「うん。何とか・・・」
「でも一体誰が・・・」
『こんなとこでよく呑気にアイスなんて食ってられるな、ゆりか』
「春樹!?」
聞き覚えのある声が背後から聞こえ、ゆりかは慌てて振り返った。其処に居たのはゆりかの幼馴染である、春樹。少し夢見がちなところのあるゆりかを幼い頃から守って来た、言わば第2の保護者のような存在でもある。
「どうして此処に・・・って言うか、何で叩くの!?痛かったよ!」
「お前を捜してた俺の苦労も考えろ」
「ど、どう言う事?」
「それより、此処で何をしてたんだ?」
「えっ?見れば分かるでしょ?愛華ちゃんとアイス食べながら、お喋りしてたの」
「ふ~ん。どうせ夢物語か何かだろ」
「も~!そんな言い方しないでよ、春樹」
「まぁ、良い。ゆりか、何か大事な事を忘れてないか?」
「大事な事?何だったっけ・・・」
「やっぱりか・・・」
「?」
「あっ、宮瀬先生!エスケープ姫は此処ですよ」
宮瀬先生、という教師の名前を聞いた途端、ゆりかは顔色をサッと変えた。そして慌ててカフェテリアを離れようとした。しかし、春樹はゆりかの肩に手を置いて外へ出る事を許さない。愛華に至っては同情しようにも春樹の様子が怖く、一言も発さない。宮瀬先生、とは愛華・ゆりか・春樹が属するクラスの担任だ。エスケープ姫というあだ名も宮瀬先生が付けたもの。と言うのも実はゆりか、数学が大の苦手で、その担当であり担任でもある宮瀬先生を敵対視しているのだ。
「おっ、其処に居たか。吉澤、助かった」
「いえ。ゆりかの行動は常にワンパターンですから」
「そ、そんな事っ!」
「あるんだよ。幼馴染の俺が言うんだから、間違いない」
「はは、流石は吉澤。雪宮の事で分からない事は無いようだな」
「はい。これでも幼馴染ですから」
「そうか。頼りにしているぞ」
「任せて下さい」
春樹は担任である宮瀬先生と仲良く話せる。それは春樹の得意科目が数学であり、数学の教科係を務めているから。その様子を見ていたゆりか。この様子であれば、話題が自分に来る事はないだろう、と考えた。そしてゆりかは愛華の背後に隠れながら、カフェテリアを後にした。
「ゆりかちゃん、良いの?」
「良いの。別に春樹も宮瀬先生も私に用があった訳じゃなかったみたいだし」
「(用があるから吉澤君、捜してたんだと思うけど・・・)」
「それより学院の伝説が話せそうな場所に移動しよう」
流れ星が導いた恋 @strawberry_dream
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