第34話 記憶を操作する悪魔 その5


キロの決断



キロ「アーシェのことどう思う?」

使い魔「おそらく魔術で暗示をかけられたんでしょう。悪魔は首を落とされてもしにませんからそのまま放置していると考えられます。」



キロ「白い剣で刺せばどうなる?」

使い魔「記憶がもとに戻るでしょうね。やり方を考えないと逮捕されそうですけど」

キロ「うう」




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「ターゲットの部屋の照明が落ちた・・・作戦は予定通りに決行する。」



名うての暗殺者集団「灰カラス」全員がカラスの面をかぶり黒いマントを身にまとう。宿屋の主人を後ろから気絶させ、縛り上げて、クローゼットに押し込む。夜半過ぎ仲間を引き入れ、5人はターゲットの部屋の鍵を開け中に入る。



ベットにひとの塊を見つける。ゆっくりをベットを囲み剣を構える。合図とともに各急所に剣を突き立てる。ザシュ・・・この手ごたえは人ではない?



天井から何がが降ってきて、隣の仲間が倒れていることに気が付く。ターゲットに気づかれていた?


ターゲットは兵隊上がりだが、我々プロと比べては一般人と大差ない。このまま剣で切り伏せ・・・すごい圧力で壁まで突き飛ばされたことに気が付く。次の瞬間脳天に痛みが走り気を失う感覚だけを覚えていた。





使い魔「キロさんの予想通りでしたね。」

キロ「どうせ、神剣アーシェ卿がいなくなった白い剣の使い手なんて恐るるに足らずなんて舐められてたんだろうな」




キロ「アーシェがいなくても俺はちゃんと強い」

使い魔「まあ、ご主人は規格外な気がしますけど」


キロ「それは否定しない。」




キロ「よし、アーシェを置いていこう。」

使い魔「・・・」


キロ(アーシェは幸せそうだったし、もうカルデラの英雄に余計な重荷を背負わせることないんだから)



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アーシェじゃなくてハーディンさんの頼みで

今日はキロが剣術の稽古をつけることになっていた。


大図書館近く、芝生のよく整備された公園でアーシェは待っていた。

アーシェ「今日はお願いします、先生」

キロ「・・・・あー、まあ、お手柔らかに・・・」



キロは兵士長に習った通り、剣の構えを教えた。

剣を構えたアーシェはなんだか得も言われぬ迫力を帯びていた。



キロ(・・・・・なんかアーシェに刺された脇腹がすーすーするな・・・)

使い魔も無自覚に発せられる迫力におびえているようだった。



アーシェ「・・・先生、私 才能ありますでしょうか?」

才能なら大いにあるだろう、なんなら世界最強って言っても言い過ぎではない。





お昼の弁当をつまみながら・・・


キロ「どうして剣術なんか習いたいんだ?」

アーシェ「・・・」



アーシェ「運動の苦手を克服したいっていうのが一番ですけど・・・他には・・・」




アーシェ「私・・・最近よく夢を見るんです。」

キロ「夢?」



アーシェ「誰かが・・・大きな怪物と戦っている夢・・・その人が剣で怪物を斬ると・・・その人はとても苦しいそうにするんですけど・・・私はそれを見ていることしかできなくて・・・・とても悲しい気持ちになるそんな夢なんです。・・・」



キロ「・・・」



アーシェ「もし、私が剣術でも習って強くなれば・・・その人を少しでも助けてあげられるかもしれないじゃないですか。」




使い魔「・・・それってカルデラ国でのキロさんのこと・・・もごもご」

キロは使い魔の口を押えた。




キロ「・・・そんなよくわからない夢・・・忘れた方がいいよ。」

きっとその人は誰かに助けてもらうことを望んでなんかいない。

自分の利益のために戦っているんだから・・・



夕刻、そろそろ帰ろうかというとき、

キロは覚悟を決めてアーシェと話を始めた。

せめて、アーシェには・・・ちゃんとお礼を言いたかった。

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