第33話 記憶を操作する悪魔 その4
腐っても元カルデラ兵士
キロ「スパイ工作をしているようにも見えないし、敵の手に落ちているようにも見えない。」
使い魔「まるで私たちのことを綺麗さっぱり忘れてしまったかのような・・・」
キロ(割と使い魔が生き生きしているのはアーシェという権力者がいなくなって晴れ晴れしているんだろうなぁ、アーシェもなんか楽しそうだったし・・・)
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マリンバーさんは明け方珍しく夢を見た。
それはフォートさんと出会った頃のことだった。
たいそう美人であったフォートさんには想い人がいた。
彼はマリンバーさんとは対極の背が高く、たくましく、人望もある人物だった。
マリンバー「君は、ずいぶん熱心に本を読んでいるんだね。」
キロ「俺が生き長らえるために必要なことなので・・・」
マリンバー「はは、なんだそのジョークは」
その様子は昔の自分そっくりじゃないか・・・
マリンバー「君はどうしても欲しい物があったときどうする?」
キロ「・・・・・?手に入れる努力をします。」
マリンバー「それでも手に入らなかったら?」
キロ「そのときは諦めてしまいますかね」
マリンバー「それは、嘘だな・・・君は諦めきれず、こうしてもがいているじゃないか」
キロ「・・・・・」
マリンバー「たとえみっともなくても『もがく』ことは大切なことだ。あきらめないことは大切なことなんだ。」
その口調はとてもとても強かった。
マリンバー「なんて年をとると説教ばかりになって申し訳ない。」
キロ「いいえ、とても参考になります。」
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キロ「流石に、本読んでばかりだとしんどいな・・・なんというか体を動かしたい。」
使い魔「あなたはとことん体育会系なんですね」
ふと見ると図書館の横の敷地や建物では踊りやら武器稽古やらに励む若者も多い。
キロ(『仲間にいれ~て』なんて言うわけにもいかないし、そもそも学園関係者じゃないし、どうしたものか・・・)
「がははは、どいつもこいつも張り合いのない奴ばかりよのぉ」
リーベル「こらーやめなさい。」
なにやら揉め事のようだった。
部長「君を今度の親善試合に出すことはできない。君は確かに強いが、素行が悪過ぎる。練習もろくにしないし。」
デカ物「だから、わしを倒してから言ってもらおうかのぉ、ひ弱な部長殿」
「おい、だれか止めろよ」
「馬鹿、ギューマと戦える奴なんていないだろ」
リーベル「これ以上暴れたら、生徒会として許しませんよ」
デカ物「ほほう、生徒会長様がじきじきに相手をしてくださるんかのぉ」
リーベル「ひ」
キロ「こらこら、子供達、喧嘩は駄目だぞ」
「!?」
「誰だ。このおじさん・・・」
「誰?誰?」
キロ(・・・・)
リーベル「あなた、この間のアーシェに絡んでた不審者ね」
キロ「・・・ってそれは誤解ですって」
キロ「さあ、若者よ、お兄さんが相手をしてやろう、かかってきなさい」
キロは競技に使うらしい棒を構えた。
デカ物「この部外者が!」
デカ物はキロに棒を振り上げて襲い掛かった。
パン
音が響いた瞬間デカ物の棒が天井まではじけ飛んだ。
デカ物は冷や汗をかいてすごすごと引き下がっていった。
キロ(なんという腰の入っていない剣だろう。カルデラの先輩の方がまだ重かったなぁ、)
「おお、すげぇ」
「あのギューマをやっつけちゃった。」
リーベル「あ、あの、ありがとう、あなたって強いのね」
部長「すごく強い。身長も僕と大して変わらないのに」
キロ「一応、元本職なもので・・・」
「あのカルデラ城の兵隊さんか」
「じゃあ、強いはずだわ」
「あの英雄、神剣アーシェ卿の国でしょう?」
一人図書館に戻る道すがら・・・
あまりの喝采にキロは眼がくらくらしたのだった。
使い魔「キロさん顔がふやけてますよ・・・」
キロ「・・・・、あーそうだよ、嬉しいよ」
キロ「カルデラ国内じゃ、兵士なんて言っても、税金泥棒ぐらいにしか思われてなかったから・・・なんか嬉しいなと」
使い魔「キロさん、首になる前も大変だったんですねぇ」
アーシェ「・・・あの、エバンスさん・・・」
アーシェが後ろから付いて来て声をかけた。
アーシェ「さきほどは姉を助けていただき、ありがとうございます。」
キロ「・・・いえいえそれほどでも・・・」
アーシェ「・・・・」
アーシェは何やらモジモジしている。
アーシェ「私は体が弱いから・・・いつもお姉ちゃんに助けられてばかりで」
キロ(・・・弱い?)
使い魔(・・・弱い?)
アーシェ「でも、本当は強くなりたいんです。あのカルデラの英雄、神剣アーシェ卿みたいに」
キロ(・・・)
使い魔(・・・)
アーシェ「だから、どうしたら、あんなに強くなれるか教えてくれたら嬉しいです。」
アーシェはそういい終えると去ってしまった。
キロ(・・・)
使い魔(・・・)
使い魔「キロさん・・・ご主人、本当に何もかも忘れてしまったんじゃないでしょうか」
キロ「そこかよ」
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