第32話 記憶を操作する悪魔 その3


本を読み続けるキロ・・・



キロ(ああ、難しい・・・マクセル先生は本を読むことは大切だからよく読んでおくようにって言ってたなぁ・・・全然読んでなかったけど)



マクセル院長「将来あなたが、大きな利益を得るためには、たくさんの本を読んでおくと良いでしょう。なぜ良いのかわかりますか?」


「知識が増える?」


マクセル院長「その通りです。役に立つ知識を記録するのが本です。その役に立つ知識をたくさん仕入れることができる人はきっと成功できると思いませんか?」





もう遅い、もう遅い





マクセル院長「本を読むことも読まないこともあなたたちの判断に委ねます。ただし、利益を得ることをあきらめないでください。たくさん得をして、たくさん成功するのです。そしてこの孤児院に少しだけ還元していただければ幸いです。」




本を読む・・・

頭に浮かぶのはアーシェの姿・・・いつも自分のいく方向を指し示してくれる・・・彼女がいなければ自分は・・・きっと・・・




アーシェ「わたしはあなたから希望を奪った。だったら返すのが当然なのよ。確かな当てがあるわけじゃない・・・でも、どうか信じて欲しい。」





キロは本を読み続けた。





アーシェは図書館の入り口でキロの姿を見ていた。

(うう、まだいる・・・他の場所で過ごしてもかまわないはずなのにどうしても本を読まなければならない気がするのはなぜかしら。)


あのひとは何か文献を探していると言っていた。それを見つけてあげればいいんだ。



誰かがキロの背中をつついた。

ああ、アーシェであった。



アーシェ「・・・あなたの熱意はわかりました。あなたの欲しい情報を持っていそうな方を紹介します。」




アーシェ「マリンバー先生。探したい本があるんですが。」

キロ「?」

アーシェ「司書の先生です。この図書館で知らない本はない人です。」



マリンバー先生は少し髪が白髪かかったメガネの穏やかそうな人物であった。

彼のすぐ横の人がキロに紅茶を差し出した。ずいぶんと綺麗な女性であった。



マリンバー「モールス?」

キロ「はい、100年前、神剣アーシェが活躍した時代の直後にこの都市に訪れているはずなんです。その足跡が知りたくて」


マリンバー「確か、カルデラの魔女でアーシェに退治された人物の名前だったかな?」


一般的にそう記されているのだから、その知識しかないはずである。まさかその時代に生きていた人物が違うと言っていたなんて言えるはずもなく・・




アーシェが若くして亡くなった後、インバースでは革命が起こってね。

そのときの資料ならばたくさん保管されているからそこから探すといい。



時間も遅く、日も暮れてきたところでアーシェよりも少し背の高い女性が尋ねてきた。



リーベル「アーシェ、アーシェ」

アーシェ「お姉ちゃん、引っ付かないでよ。」

リーベル「こんな可愛い妹に引っ付かないお姉ちゃんなんていませんよ」



フォート「相変わらず、仲のいい姉妹ですこと」

リーベル「当然でーす。マリンバー先生とフォートさんぐらい仲良しなんですから」

フォート「あらあら」



リーベル「それでこの方はどなたですか」

リーベルはキロの方に向き直った。



マリンバー「彼は探したい書物があると尋ねてきた人でね」

キロ「キロ=エバンスです。」


リーベル「まさかあなた・・・アーシェをナンパしたっていう例の不審者・・・」

キロ「・・・違います。行方不明の仲間に似てて間違えただけで・・・その」



リーベル「へーーー、こんな銀髪の女の子が他にいると思えないけれど」

キロ(不審がられてるな・・・)

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