第31話 記憶を操作する悪魔 その2
アーシェ=ハーディンさん
使い魔「アーシェさんが敵の手に落ちていないとすると、他人のふりをする理由は一つです。学校の内部に悪魔がいてスパイ工作をおこなっているのですよ。」
キロ「なるほど・・・」
(アーシェがそんな まわりくどいこと をすると考えづらいんだけど・・・)
使い魔「なので人目につかない場所で話しかければいいのですよ。」
使い魔「そうですね・・・例えば、『放課後、体育館裏にて待つ 二人で会いたい』みたいな手紙を下駄箱に差し込んでおくとか・・・鉄板ですよねぇ」
キロ「それがどうして鉄板なのかわからないけど、とにかくやってみるか・・・」
キロはささと手紙をかいて準備した。
使い魔「なんです?その味気ない文章、業務連絡ですか?」
キロ「業務連絡だよ」
よし、あとはこれを下駄箱に・・・
キロ「・・・」
使い魔「・・・」
キロ「あーしまった。下駄箱の位置がわからない、あと学習院に入らなきゃ駄目だ・・・」
早朝・・
学習院、学校なるものはとにもかくにも排他的だと思う。
朝、アーシェは制服姿で登校していた。
その姿は周囲の生徒が見惚れるほど美しいものだった。
キロ(そうだ、このまま、この手紙を渡してしまおう・・・)
キロ「このまま、手紙を渡してしまおう・・・」
使い魔「そうですね、それが無難かと」
キロ「行くぞ・・・」
使い魔「どうぞ」
この日は結局、渡せなかった
キロさんは「なんだかすごく恥ずかしかったから」と言っていた。
改めて、自分があんな輝く美人に手紙を渡そうとしていることが信じられなかった。
キロ「・・・」
キロは使い魔を見た。
キロ「・・・」
使い魔「・・・」
キロ「・・・アーシェのことはあきらめよう。元々俺とは住む世界が違うんだ。」
使い魔「はあ・・・」
使い魔は賛成も反対もしない。使い魔はアーシェに虐げられてきてどちらかというと嫌いという感情を持っていることだろう。無理に引き止めるはずもない。
$$$
キロは図書館へ向かった。魔女モールスについての文献を探すのだ。
といっても歴史書だけでこの数・・・とても探しきれない。
キロは読み書きは苦手である。1冊の本を読むのにたくさんの時間がかかった。
アーシェは本を読むのも早かったな。あの才女は何でもオールマイティだな・・・
ならばあきらめるのか。
なぜ、ここに来たのか、アーシェがここに手がかりがあると言ったからだ。
キロは閲覧室の机に座って、少しづつ本を読むことにした。
『カルデラの歴史』
見事にアーシェ卿が死んで父親が自殺したことになっている・・・歴史とは実は嘘が多いのではないかと勘ぐってしまいそうだ。モールスも処刑されたことになっているな・・・なんとも生々しい話だ。もっと楽しい話が読みたいところだが・・・
『インバース地方の歴史』
悪魔宗教と民衆の氾濫、王政、貴族制の廃止・・・
ここまで読むまでにもう日が暮れていた。
制服姿の学生は夕方から増え始めた。
次の本を探していると
制服の女子が高いところの本を取ろうとしていたので取ってあげた。
銀髪の・・・
キロ「あ」
アーシェ「あ・・・どうしてあなたがここに・・・」
アーシェは2、3歩後ずさった。
場所を図書館前の公園に移す。
キロ「全くの偶然だ、アーシェ」
アーシェ「・・・気安く呼ばないでください。私はアーシェ=ハーディン、遠慮と距離感の証にハーディンさんと呼んでもらえると助かります。」
キロ「ここの図書館に来ることが旅の目的だったんだ。もしかしたらここに来ているかと思って」
アーシェ「・・・へー」
キロ(かけらも興味なさそうな声だな)
アーシェ「その女性って、あなたの何なんですか?」
キロ「へ?」
アーシェ「男性と女性が二人きりで旅なんて・・・なんというか夫婦だったんですか?」
キロ「・・・あーただの協力者というか仲間だよ」
アーシェ「へー、たぶん向こうはそう思ってなかったんじゃないですか。」
キロ「・・・・」
アーシェ「あなたがそんな中途半端な態度だからあきれて離れていったんじゃないですか。そんな気がします。」
キロ「・・・・」
アーシェ「ここは・・・私の秘密の場所なんです。お姉ちゃんやらラブレターやら色々注目される私が安らげる唯一の場所なんです。・・・こんなことをいうのは失礼ですけど、もう来ないでもらえると嬉しいです。」
キロ「・・・・・それは駄目だ。」
大きな声が出てしまった・・・気まずい沈黙
キロ「俺はどうしてもこの図書館で見つけなきゃならない情報がある・・・」
アーシェ「あなたにその情報を教えたひとが離れていったのにですか?振られたのに未練がましいですね・・・」
キロ自身なぜここで食い下がったかよくわからなかった。
キロ(なんでこんなことを言っているんだ?)
アーシェ「・・・あなたがそこまで言うのなら、私は・・・・秘密の場所を変更することにします。」
アーシェは走り去って行ってしまった。
心のどこかでアーシェが帰ってきてくれると思っていたんだろうか。
アーシェが去って・・・
なお俺はここで意地を張り続ける・・・俺の人生はこんな場面の連続だ。
俺は何日かかはずっと本を読み続けた。
アーシェはいつも通り学園生活を送っている。
彼らの生活は交わることがない。
いつもの生活、いつもの心穏やかな日々・・・
だけど・・・なぜだろう・・・
なぜか図書館で本を読まなければならない気がする。
アーシェの中の直感が図書館で本を読めと命令し、逆らうことを許さない。
アーシェは図書館へ向かわざる得なかった。
アーシェ(まだ、難しい顔して本読んでる・・・)
・・・彼女に振られたに違いないんだからさっさとあきらめればいいんです。
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