第14話 感情を食べる悪魔 その1




感情は必要なものか?

いや無駄なものだ、必要のないものだ。

感情は、人の合理的な判断を鈍らせる邪魔なものだ。



若きシスター、ストレアは考える。




その町のシスターはちょっとした評判になっていた。


彼女に相談しに行った者はいままでと違う人間になって帰ってくるそうだ。

アルコール中毒の男は、真面目に働きだしたそうだ。

ひどい振られ方をした女性は、もうそのことを忘れたように涼しい顔をしている。

ヴァイオリンのコンクールで落選した少女は、今では第一線で活躍している音楽家になった。




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使い魔はみっともない旗を背負っていた。

『悪魔祓い請け負います』

これは、ロックさんのお手製だった。もういらないというのでもらってきたのだった。



町の人はキロを危ない人のように距離をとった。

キロ(・・・ああ、想像以上に浮いてるなぁ)







キロはこんな宣伝で依頼が来るわけないと思ったけれど

お昼に食べた定食屋の伝票と一緒に

「今夜、酒場に来てください、ご相談したいことがあります」

というメモを渡されたのだった。

定食屋の店員はとても暗い顔をした女性だった。





キロは言われた通り酒場で待つことにした。

キロは何となくそわそわしていた。

キロ(おお、なんか大人な感じ)


使い魔「夜の酒場に女の人に呼び出されるなんて、期待しちゃいますよね、はっ」

キロは使い魔の鎌首をつかんだ。

キロ「なんだ、今の はっ て」




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女性は暗い顔をして話し始めた。

話を要約すると

彼女の友人は最近事故で夫を亡くしたそうだ。



毎日、毎日、夫の墓に出かけては泣いて、出かけては泣いてを繰り返したそうだ。

そんな姿を見かねて、

評判の町のシスターに相談に行くように勧めたそうだ。

相談に行った日を境に彼女は変わった。



慰霊祭にさえ墓参りに行かなくなった。さらに、彼女はこういったそうだ。

「死んだ人間に時間をかける意味はない」と


女性「ナラがそんなセリフを言うわけがない、彼女がどれだけ夫を愛していたか私は知っているもの。町のシスターはとてもいい相談役と評判だけど何かおかしい」





使い魔「・・・・」

キロ「・・・・」




キロ「むしろ良かったじゃないですか、悲しみに囚われてばかりじゃ前に進めませんし」


キロの人生の中で女の人と話した記憶などあまりないし、

まして、口論になったことなどほとんどないが、

このセリフをきっかけに口論になってしまい交渉は破談になった。



使い魔「キロさんって最悪ですね」

キロ「言いたいように言って・・・・」



キロ「でもこの件は完全に悪魔関係ないような気がするんだけど」

使い魔「本当に最悪ですね」

キロ「何回も最悪って言うな」

キロは涙目になった。



使い魔「こういう小さな相談に真剣に対応しないとクライアントから信頼されませんよ」

キロ(なんで説教されてるんだろ・・)




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使い魔の説教ののち次の日もう一度食堂の女性(シルさん)を尋ねると

店長から今日は休みをとっていると聞かされた。

そして、その次の日彼女に会いに行くと彼女は豹変していた。

もう暗い顔をせず、笑顔であった。

もう何の不安もない顔、笑顔ではあるが合理的な作り笑顔のように感じた。

おそらく、このような顔を『仕事ができるひと』の顔というのだろう。




キロ「こんにちは、この間は、申し訳ありません。もう一度しっかりとお話を伺いたいのですが・・・」

シル「こんにちは、もうお話を聞いてもらう必要はありませんんわ。昨日そのシスターさんのところに行ってきました・・・けれど、本当に賢く優秀な方でした。どうしてあんな疑いを持ってしまったのか疑問です。」

キロ「・・・へ?はあ」

この間の感情的な彼女とは180度性格が変わっているように感じた。

シル「もう、いいかしら、無駄話で時間を浪費するのは合理的ではありませんので」




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キロは広場の木陰で休んだ。

キロ「なんか別の人みたいだったな・・・」

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