第13話 アーシェの忠告



俺の寿命はあと一年だ・・・死ぬことなんて怖くない、しっかり仕事をして認められるのなら・・・


月の見える小高い丘でキロは考えていた。




アーシェはキロをずっと監視していた。

キロが悪魔を退治するのを見ていた。

アーシェは胸が張り裂けそうな気分になった。

キロにもうこれ以上、傷ついて欲しくなかった。



その想いだけが、もうキロの前に姿を見せないと決めていたアーシェを動かした。



月光を背にして銀髪の少女が再びキロの前にふわりと現れた。

キロ「!?」

キロは白い剣を構えてじっとアーシェの挙動に備えた。

相手は、伝説の騎士・・・

少しでも油断すれば、一瞬で首をはねてくる達人だ。



アーシェはあまりの警戒振りに少し眉をひそめた。

アーシェ「・・・キロ、もう悪魔を退治しては駄目。」



キロ「・・・?」



アーシェ「・・・あなたの寿命を・・・縮めてしまうわ」


キロ「・・・退治しようがしなかろうが俺の寿命は、あと一年もたないらしい。だったら少しでも悪魔を退治したほうがいい・・・」



アーシェ「あなたを心配する人だっているわ。自分の命を粗末にしない方がいい」

キロ「俺には、もうそんな人はいないし」



冷静にリアルにそうだ。

孤児院の村の経済を崩壊させて、

カルデラの国の皇太子の妃を暗殺した男を心配する人間が

この世にいるなんて思えない・・・




アーシェ「・・・・」

私は・・・心配だ・・・なんていえるわけがない。

私は、キロの寿命を縮めた張本人だ。

彼を捨て駒にしか見てなかった。

私にキロを愛する資格なんてないんだ。




アーシェは何も言い返さずに去っていった。

キロ「はー怖かった。殺されるかと思った。」

使い魔「ホントですよね」

使い魔は、どこかに隠れていたらしい。



去り際にアーシェは泣いているように見えた。

しかし、きっと暗かったので見間違えたのだと思った。




アーシェ(私はキロの命を諦めない。絶対に・・・)

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