第12話 人の痛みを吸収する悪魔 その3
キロは考えた。
あの悪魔が本気で襲ってきたらロックさんを守りきれないかもしれない。
キロ「ロックさん、やっぱり引き返しましょう。」
だからといって、自警団では、悪魔には勝てない・・・
キロ「そしてこのことは見なかったことにして永遠に秘密にしておきましょう。」
使い魔「・・・キロさん、説得も下手なんですね。」
ロック「はは、何言ってんだよ。俺は悪魔祓いだぜ?・・・悪魔を退治するまでは戻らな・・・おい後ろ!!!」
さっきの悪魔が暗闇に乗じて背後から襲い掛かってきた。
キロは、なんとか避けようとしたが攻撃が当たりその場に倒れた。
ロック「俺の部下に何やってんだよ!!」
ロックは持っていた斧で悪魔の腕に切りつけた。
悪魔は傷をつけられて怯んだ。
振り払った腕に当たってロックは壁に叩きつけられた。
人の痛みを吸収する悪魔「ああああ、白い剣の所有者以外を攻撃してしまった。」
ロック「まさか・・・その声、イルマさんか、イルマさんなのか?」
人の痛みを吸収する悪魔「!!??」
悪魔は逃げていった。
キロ「つつつっ、ロックさん大丈夫ですか?」
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ロックを安全なところに避難させて、キロは悪魔を追った。
使い魔「悪魔なんて放っておくんじゃないんですか?」
キロ「ああ、このままにしておけない」
イデア先生は言っていた。
キロ「今、この状態で、悪魔退治をしたらどうなりますか?」
イデア先生「あなたの体にとって少なくともプラスにはならないわ、でも、もう13匹の強大な悪魔の魔力を心臓に持つあなたが今から下級悪魔の魔力を多少取り込んでもすぐに寿命が縮むということにはならないわ、もちろん寿命が1年足らずという事実が動くわけではないけれど」
キロ「はっきり言いますね・・・」
あまりのはきはきした口ぶりにキロは涙目になった。
下水道の集合する大きな合流地点に『人の痛みを吸収する悪魔』がいた。
キロは白い剣を構えて叫んだ。
キロ「イルマさん!!あなたに取り付いた悪魔を退治します。できるなら抵抗しないでください。」
・・・・私はもっと助けたい
イルマ「君と私は似ている。」
キロ「・・・」
イルマ「誰かのために自己犠牲を払い続けて真っ黒に穢れていく・・・私は君を愚かだとは思わないし君もおそらくそうだろう、誰かのために犠牲になることこそが人間にとって必要なことなんだ。だが、私はそれを人に強制しない。自分が使命を全うすることで周囲にそれを気づかせることができるからだ。そう、私は、人類の太陽になるんだ。」
この世に自分の利益以外で動く人間なんていない・・・
自分の利益のために行動する・・・それが結果的に全体の幸福につながる。
そして、全体の幸福だけを願って個人を犠牲にするような言葉を発する人間を信用してはならない。それは、人を虐げるための方便である。
自分が教え込まれてきたこと・・・
この人を見てもただの自己満足のためにそんな行動をしているとしか思えなかった。やっぱりマクセル院長の言う通りだんだろう・・・
そして、きっと今自分が『したい』と思っていることも・・・自分の利益のための行動なんだ。
キロ「使い魔・・」
使い魔「はいはい?」
キロ「約束してくれ、命が続く限り悪魔を退治する。その代わり、俺が死んだら、稼いだお金をカルデラの俺が迷惑をかけた人々に届けてくれ。」
使い魔「・・・・ええ、約束しますよ。」
イルマさん「・・・・私はもう人の痛みを吸収できないんだ。吸収すれば誰かに痛みを分け与えてしまうなんでだろう?、どうしてだろう?君の白い剣をよこせ、きっとその剣さえあれば私は、更なる痛みを吸収できるはずだ!!」
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魔力をキロにすべて吸収されたイルマさんは元の人間に戻っていった。
その後、自警団が探していた悪魔は、生還したイルマさんが倒したことになり、イルマさんには賞金が授与された。
キロはイルマさんから賞金の半分をもらうことになった。
イルマさん「本当に全部じゃなくていいのかね。」
キロ「ええ、イルマさん自分の財産全部投げ売っちゃったんでしょう?」
イルマさん「ああ、そうなんだが・・・」
キロ「思うに自分が幸せじゃない人が他人を幸せにすることなんてできないんですよ」
イルマ「・・・ああ、反省するよ」
キロは更に西へ旅立つ。
去り際にイルマさんが別れをたいそう惜しんでくれた。
イルマ「本当にありがとう、私は、悪魔の力を借りて、人の痛みを吸収できなくなったときもう元に戻りたいって心のどこかで思ったんだ」
キロ「なんていうか、俺の分まで幸せに生きてくださいね」
イルマ「・・・私はなんて馬鹿なんだろう、救うつもりが救われてしまうなんて。」
キロはできるだけ気丈に振舞った。ここで自虐的なことをいうとイルマさんを傷つけそうだったからだ。
ロックさんはまじめに就職活動をする気になったらしい。
母親「悪魔祓いになるんじゃなかったのかい?」
ロック「・・・ふ、俺には、とても立ち入れない世界だってわかったんだ。」
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