第21話発病までの経緯 一覧表 フロント編
二十六才、三月。友香は売店よりフロントに異動。主任藤川に基本業務を教わる。
支配人、藤川より、フロント係としての見栄えのためにダイエットを命じられる。以降、友香は食事制限と運動に努めるも中々結果が出なかった。
藤川は秋ごろになると友香のダイエットを諦め、目前での支配人の
支配人は社員食堂にて、毎回友香の食事量に「多い!」「ご飯食べている!」など大袈裟なリアクションをした。
友香が痩せにくい体質だということで仲居への異動をしつこく勧めた。また、友香の退職まで、しつこくダイエットの成果、体重を聞き、自分のダイエット成功話を自慢した。
早出出勤の日、藤川より叱責される。
「痩せるまでフロント研修生の名札は外させない!」
「本当は痩せるまでフロントカウンターに入れたくないけれど、チェックアウトのときは人がいないから仕方なく、仕方なく入れてやっている!」
藤川はフロント係のシフト作成を担当していたが、友香の早番は月に一度あれば良い方だったので、チェックアウト業務を覚える機会が極端に足りなかった。
支配人に藤川が作成するシフトについて友香に指摘、叱咤するが、藤川本人にも叱咤したのかは不明である。
売店在籍時からの精神的ダメージが強く、フロントにおいてもお客様や社員への恐怖心が募る。
業務企画課長に昇格した森本、フロント係の太田は特に後輩の相談を受け入れる姿勢であったが、売店在籍時より引きずる恐怖、根拠のない猜疑心により友香は自分の意見を飲み込んでしまった。
上記の理由により、フロントカウンターでの接客より、客室案内時など他の社員がいない場面での方が自然な接客ができた。
友香は社員寮暮らしだったため、休日にH市内のスーパーで食品、日用品の買い出しをしていたが、翌日出勤すると支配人より、加東を市内で見かけた社員がいる、何を買った、などプライベートを詮索する発言をされた。
よって外出先で人に見られるきとに苦痛を感じ、できるだけ社員寮より徒歩五分のコンビニで買い出しをするようになった。その時間帯は深夜零時以降、または常温保存の食品、文房具のみ出勤途中に、鞄に入る範囲である。
社員寮の個人部屋が売店担当長松永と同じ階だったこともあり、寮内ですら極力部屋に
フロントへの移動後も、松永の友香に対する態度は変わらず、会社のシステム上フロントと売店の連携が不可欠であるにも関わらず、友香の退職まで業務連絡が一切できない状況であった。その結果、幾度にわたりお客様にご迷惑をおかけした。
藤川は上記の場面を目の当たりにしたが、松永の行動を肯定、その理由として友香に何かしら原因があると指摘する。
友香はお客様のご迷惑にならないよう原因解析を試みるが検討つかず、また今まで以上に大人しくしたけれど、松永の態度に改善はまったく見られなかった。
売店係が中抜けの間はフロント係が売店で接客するが、松永の出勤時に友香が売店のレジに立っていたら、本人とお客様の前で消臭スプレーをレジ周辺に撒いた。業務代行に対する言葉は皆無、目すら合わせなかった。
友香のフロントへの異動以降、支配人は松永との関係について一切口にせず自分自身に頷くようになった。その表情から、友香の異動で売店の問題は解決した! という現実逃避していると伺える。
夏の繁忙期以降、藤川との遅番勤務日は伝票処理を含めフロントカウンター内での業務はほとんどできず、次第にフロントカウンター外で行う作業の指示のみとなった。
フロントカウンター外での作業は、支配人のいる事務所でのお客様所有の車番号という情報整理、客室への氷や浴衣などのデリバリー、カラオケルームのセット、お食事会場にて対象のお客様の記念写真撮影、事務所作業場の清掃である。
事務所作業場を除く上記の作業はお客様にとって必要な業務であると思い実行するも、支配人より、友香ばかりがフロントカウンター外で動き回る旨を友香本人に指摘するが、支配人の根拠のない発言が無知の狂言に聞こえた。
遅番出勤時に、早番出勤者ができなかった掃除機かけを、藤川の指示で行うことが多々あったが、支配人より以下の通りに友香本人が叱責される。
「加東さんがする仕事といえば、まず掃除機! フロント係でなくてもできる作業ばかりで成長することができないじゃないか!」
支配人は友香を心配しているつもりの発言であったが、支配人特有の責めるような声量、口調に友香は不快感を抱く。
夏、秋の繁忙期は要請時友香は毎回食事会場にヘルプに行くが、フロントへ戻った後の作業はほとんど客室へのデリバリーと事務所作業場の清掃のみだった。
藤川以外のフロント係が友香と同じ遅番勤務の日は、フロント係の計らいにより伝票処理やホテルホームページの社員ブログ作成などフロントカウンター内での業務を教わり実行できた。
また、同じフロント係の太田に、自力で理解できない業務について尋ねると、友香が理解できるまで教えてくれた。
森本は藤川不在時に特に自ら友香の教育に身を乗り出した。
森本よりホテルホームページのブログ作成を教わり、文章力を買われて以降友香の担当業務となった。また売店在籍時より企画力を求め認められ、フロントへの移動後も自らアイディアを生み出し、森本という第三者に提出することで企画力を磨く習慣を身に付けた。
森本はホテルマンとしての引き出し、つまり特技や任せられる業務という強みになる武器を多く持つほど良いと諭し、フロント業務を覚えることと並行することを勧めた。また、友香の持ち前の英会話力の精進と第二外国語という武器として自ら取り組んだ中国語の独学を評価してくれた。
一方藤川はフロント業務を覚えることを優先するべきだと主張し、語学を独学する姿勢を否定した。森本は藤川の上司であったが、両者の考えの大きな違いに戸惑い、友香は今まで以上に社員の顔色を伺った。
ホテルホームページの社員ブログ更新頻度を保つため、チェックイン前にフロントカウンター内のパソコンにてブログ作成する日もあったが、支配人や金魚の糞のような営業部社員の口はさみが多々あった。
発言の多くは何をしているのか、という冷やかし、または業務に関係のない話題、主にダイエットの成果に関することだった。
声をかけられ、作業をしている旨を伝え「すみません」と言っても、業務を阻む発言は止めなかった。
友香自身の未熟さのため業務に集中して社員の声が聞こえないことがあったが、支配人に何度も説明しても理解してもらえず、以下のように言われた。
「加東さん悪い癖は、自分の都合の悪いときに人を無視することだ。相手が上司、支配人であってもね」
チェックイン時、お客様ご到着の待機でフロントカウンター外正面玄関に立つとき、ロビーにお客様が支配人は業務に一切関係のない話題、主にダイエットとプライベートについて振った。友香以外の社員に対しては、ダイエットを除くプライベートの話題を持ちかけた。相手が時間制限のある作業をしていてもこの言動があり、他人に対する配慮がまったく感じられなかった。
お客様ご到着の待機中、支配人は金魚の糞のような営業部社員とともにホテル駐車場正面玄関付近に立つが、支配人が友香に外に来るよう手招きした。友香が外に赴くと業務に関係のない話題か、本来主任の藤川に伝えるべきことを友香に発言した。
「加東さん、何キロ痩せた?」
「加東さん、フロントに異動して何ヵ月経つの? まだ、フロント研修生の名札が取れていないじゃない!」
「お客様はまだ到着されていないのだから、藤川さんは今、この時間に加東さんに教えようとすらしない! フロント側は人員不足だというけれど、それもそのはずだ。加東さんを育てようとしないのだから!」
業務上やむを得ず支配人の手招きに応えなかったとき、支配人はその理由よりも手招きに応えなかったことに対して強く叱責した。
「俺は支配人だぞ! 俺の一言で加東さんの仲居異動だって実行できる。フロント係を辞めさせることだってできる!」
「何か理由があっての行動だと思うけれど、人を、それも上司を無視するのはいけないことだ!」
「フロントの先輩が外に行くなと言ったのだろうけれど、俺は、支配人は藤川主任より格下なのか? ホテルで一番偉いのはどの役職だ、支配人だろう?」
「加東さんはフロントに向いていないね」
手招き、権力に関する発言についても、友香の退職まで続いた。
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