第20話発病までの経緯 一覧表 売店編

 当作品ではKホテルでの出来事が回想になっておりましたので、こちらに一覧表を掲示させていただきます。

 主人公、友香の経緯は以下の通りです。

 

 十八才より二十五才まで。アルバイトにて生計を立てる。

 二十五才、七月。アルバイトを辞め、Kホテルに入社。

 同年八月。フロント研修を経て、売店に配属決定。

 以降、同じ売店係の松永の冷たい態度により、三度の胃痛で病院に通う。

 松永の態度は以下の通り。

 挨拶ですら無視、目すら合わせない。お客様の前でも態度を変えず、一度お客様のお叱りを受ける。

 仕入れ数や販売のノウハウなどほとんど教えてくれず、メモ書き、メールでのみ注意とファックスでの注文の指示を受ける。一方的に責める口調で、常に命令文のみ。

 売店部門管轄のフロント主任(当時は森本)指示にて売店内で季節の模様替えを実行するも、出勤してすぐ模様替えをすべて外される。

 模様替えに関する指示はただ一言「しなくていい」

 当時の直属の上司である森本と、松永を良く知る、友香の同年の先輩に相談するが、松永との関係は悪化する一方だった。

 森本が支配人の土田に力添えを訴えるも、まったく耳を傾けてくれなかった。

 土田の返事は以下の通りである。

 「松永さんが可哀想」

 「加東さんの方が後輩なのだから」

 また、松永との関係悪化が社内に広がり、友香は他部署の人間からも非難される。

 総務課からは松永の態度の改善の意志が見られないことを知っていながら、友香にきつい口調で注意する。

 「仕事を教えてもらうまで頼み込みなさい」

 「加東の方が後輩で年下なのだから、松永さんを敬いなさい」

 「加東さん、あなた売店に何ヵ月いるの?」

 仲居の男性主任からは、友香が相談した先輩の前で注意をする。

 「こいつはこれから仲居の仕事を覚えていく人間だ。お前と松永さんの関係が悪いことは知っているけれど、お客さんには関係ないだろう。他部署の人間まで巻き込むな!」

 同年十二月。予約係の社員が売店に異動。同時に松永は売店担当長に昇格する。

 支配人と売店係三人での話し合いは、三回とも支配人の一方的な発言のみだった。

 「とにかく三人仲良く仕事をすること」

 「三人で話し合って季節の模様替えをすること」

 「お客様との会話で売店の売り上げを伸ばすように」

 しかし友香がお客様との会話をすると支配人は野次を飛ばす。

 「加東さんがまたお客様と話している!」

 友香売店在籍中、管轄部署及び管轄者が以下の順で変更された。

 フロント主任森本、総務課長、営業部副支配人。

 管轄部署変更の都度、管轄者が売店の話し合い参加するも、総務課長と副支配人は発言しない。また、売店の様子を見て見ぬふりする。

 話し合いの中で一度だけ支配人が友香に警告する。

 「これ以上松永さんと加東さんの関係が悪化、改善がみられないようであれば、二人のどちらかに仲居に異動してもらう」

 売店の新参者の教育は松永が行ったが、親身な教え方は友香の異動のときと比べると、まるで別人だった。

 売店に三人揃う日は松永と新参者、友香と居場所が別れ一人だけ空気以下の存在になる。

 新参者が最年長でありながら松永に気を遣うことも相まって、三人での模様替えの話し合いすら成り立たず、二人が不在時に友香のみ支配人より叱咤を受ける。

 「いつまでに模様替えをするのか?」

 「話し合いができないのではなく『しない』のだろう!」

 「加東さんから孤立しているだろう」

 「そんな風に三人バラバラに仕事をするならば、売店に三人も人を置く必要はない!」

 「なぜ森本に、他部署の人間であるフロントに松永さんのことで相談する?」

 「人の文句は他の人に言うな!」

 松永が作成する勤務表では、平日の多くが松永と新参者の二人の日と、友香一人だけ配置という状況だった。

 注意点として、新参者と友香との関係は至って普通だった。

 森本が友香の様子を見かねて自ら仲介役を買い、売店における接客を教える。

 友香の生来の負けず嫌いと森本の教育により、頭角を現し以下の目に見える結果を出すも、友香の存在は空気以下のままだった。

 友香の出した結果として、まずは松永不在時の売り上げの差。チェックアウト時の精算者以外でこの数字をしるのは、代表取締役社長、支配人、副支配人、総務課長、フロントの精算者である。

 次に、お客様アンケートの結果である。

 友香は毎月名指しでお褒めの言葉をいただいていた。

 一方、松永は売店における接客で誉められたことはない。

 この結果は全部署、全社員に行き渡る。

 長年勤めている仲居によると、松永が売店に配属されてからの十年間は酷評ばかりだったという。

 けれどどれほど結果を出しても、役職者、特に支配人の対応は変わらなかった。友香が常に完売商品を出しても、売り上げを伸ばしても決まり文句は一つ。

 「さすが松永さん」

 夕食会場が分からないと売店に尋ねたお客様をご案内すると、食事会場にヘルプをしていた松永は、お客様の目前で「向こう行け!」と言われた。

 友香は困っているお客様を放っておかないといけないのか、と悩みその旨を副支配人に相談する。

 副支配人は自分が松永に注意すると言ったが、実行したのかは不明。また、松永にも態度を改める姿勢が見受けられない。

 夕食会場の人員不足によりヘルプに行くと、海外からのお客様から日本料理について英語で問われた。英語で対応すると、仲居の男性主任は友香に対して有無を言わせない叱咤をした。

 「何、客とくだらないことを喋っている。さっさと仕事しろ!」

 彼の口調、態度ともに人を見下す不良のようで、お客様の前でも躊躇うことはなかった。

 KホテルがiPadを導入したことで、友香は支配人より大きな屈辱を受けた。

 「iPadに向かって何か英語を話してよ。加東さんの英語が正しいか確かめるから」

 「iPadがあれば、加東さんが要らないね」

 社員食堂にて、友香は徐々に過食を繰り返すようになったが、ストレス解消に繋がらなかった。

 本来優先順位第一位であるはずのお客様より松永、売店管轄者、役職者に気を遣い過ぎる毎日に、胃痛以外の以下の症状が現れた。

 眩暈により勤務中売店にて倒れる。食べ物に対する視覚、嗅覚の拒否反応により一週間の絶食、度重なる吐き気のため勤務中何度もトイレに駆け込む、人との会話や目を合わせることへの苦痛、モノに当たるほどの苛つきが続く。


 二十六才、三月。全社員の前で松永に無視されたことで、友香は過呼吸に陥りH市内の病院に搬送された。原因は極度のストレスだという。

 友香が倒れた場には社長も同席していたが「ストレスの原因が分からない」と発言する。

 友香は三日ほど休暇をいただき復帰した際、松永に迷惑をかけたことを詫びるも、完全に無視される。

 友香への無視は退職まで一貫された。

 売店、特にレジに立つ際の不快感、軽度の眩暈が退職まで続くが、社会人としてのプライドを持ち、お客様を始めとする周囲に隠し通した。

 フロント主任に昇格した藤川より、過呼吸の原因が友香のネガティブ思考に原因があると強調される。

 後日、支配人と副支配人より売店係除名及びフロントまたは仲居への異動選択の命を受ける。同時に、過呼吸に陥った旨を支配人より叱咤を受ける。

 「なぜ、過呼吸になるまでストレスを抱えていた? 何のために自分たち役職者がいる?」

 友香は以下の理由でフロントへの異動を選択する。

 人柄、仕事ぶりに疑問を抱く仲居主任の下では、ホテルマンとして人として成長できない。

 自分の仕事に誇りを持つフロントの先輩の下で接客スキルを磨きたい。

 支配人、副支配人は友香の希望を受け入れると同時に釘を刺す。

 「今後フロント社員の悪口を他部署の人間に言ったら、そのときは辞めてもらう」

 以降、友香は今まで以上に人と距離を置き、言動に注意を払う。

 春休みの繁忙期。フロント係の人員不足のため、友香は売店勤務最終日までお客様案内係としてフロントと売店の往復勤務となる。

 友香がフロントに立つと、支配人より「加東さんはフロントに向いていないよ。仲居になれば良かったのに」と言われる。仲居への異動を勧める発言は他のフロント係社員がいる場でも一貫した。

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