好きこそ物の上手なれ
『好きこそ物の上手なれ』とは、人は自分が好きなことなら、進んで工夫したり努力したりするから上達が早く、おのずと技術も口上するということ。
この言葉を見聞きすると、バーテンダーをしている前夫を思い出します。
私と出会う前のことですが、彼は生死の境をさまようほどの交通事故にあい、そのときに脳挫傷を患いました。
その結果、物忘れが非常に激しく、なかなか物を覚えられない日々が続くことになりました。
メモをしておこうとノートを持ち運んでいても、ノートにつけることも、ノートで確認することも忘れてしまうほど。けれど、数年たった頃には、少しずつ快方に向かっていったのです。彼がバーテンダーに転職したのはそんな時期でした。
そして、彼は買い物すれば何か一つは買い忘れるのに、カクテルのレシピだけは不思議なほど決して忘れないんです。
好きなもの、熱中しているものだからでしょうか。カクテルだけではなく、ウイスキーの銘柄、蘊蓄に至るまでお酒に関することだけはすんなり吸収し、忘れないようでした。
彼を見ていると、人間って決して好きなことだけして生きていけるわけじゃないけれど、好奇心をもって好きなことに身を置いている人はある意味強く生きていくんだなと感じたことを覚えています。
私などは暗記が苦手で、特に数字が駄目なんです。なのでレシピの分量がまったく覚えられない。それどころか日にちや時間などの数字も駄目なので、記念日にこだわる人とはお付き合いできません。現在、3時間おきに授乳しているのですが、最後に授乳したのは何時かもよく忘れます。
そのくせ、理系の人が好きなんです。数字に強い理系の考え方にとても興味があって憧れます。
けれど、こればかりは『好きこそ物の上手なれ』とはいかず、数字は好きになれずに育ちました。中学の数学を受け入れることができず、挫折したのです。ノートにXとかYといったアルファベットが並び出した頃でしょうか。答えが一つしかないところが数学の魅力の一つかもしれませんが、当時の私にはそれが窮屈に思えて、息苦しかったのです。
でも、科学は見ていて面白いですよね。今ではテレビなどで科学実験をしているのを観るとワクワクします。ただ、学生の頃はその面白みが見いだせなかったんです。
今では興味津々なんですけれど、苦手意識が根強くあって、自分が足を踏み入れることのできない領域だから憧れるパターンなのかなと勉強しない言い訳をしています。
文学や音楽ではなく、数字や科学の面白さに目覚めていたら、違う人生だったのでしょうか。ご縁が大事なのは恋愛だけじゃないようですね。
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