創業は易く、守成は難し

 『創業は易く、守成は難し』とは、創業つまり事を新しく始めることはたやすいが、守成つまりそれを守り育ててゆくことは難しいということ。


 出典は唐書とうじょです。

 中国唐の太宗たいそうから「創業と守成はどちらが難しいと思うか」と問われた魏徴ぎちょうが「守成」と答えたという故事からきています。


 これは現代のビジネスの世界や習い事でもいえることですよね。

 私がアルバイトをしていた蕎麦屋は美味しかったけれど、店主の独りよがりな性格ゆえに後継者を育てることができなかったので一代限りになると思います。

 習い事で毎年発表会があっても、数年後には顔を見ることもなくなる人だってあとをたちませんでした。

 

 一族経営の会社に勤めていたこともありますが、そこでも守成がいかに難しいものか体現していたように思います。

 カリスマ性のある創業者は第一線を退き、親族が二代目として経営していたのですが、なかなか難しそうでしたねぇ。

 三代目候補の一人は、「勉強することを忘れたら人間止まるんだよ」と当時の経営陣を嘆いていましたけれどね。私はそれに「感謝する気持ちもね」と付け加えたいです。


 それに、飲み屋街を歩いていると、本当に『創業は易く、守成は難し』そのものだと思います。

 おや、看板の色が変わったと思ったら、違う店になっている。移転のときもありますが、しばらく飲み屋街に顔を出さない間に「あれ、変わってる」「あそこの店もなくなっている」「おや、ここも」なんてことに。

 そしてちゃんとそのあとに新しい店が看板を出すんですね。特にこの頃では入れ替わりが激しいです。不景気に加えて、お酒を嗜む若い人が減っていることも原因ではないかという話でしたが。


 その中で長年変わらぬ看板を掲げている店もやっぱりあります。

 その店が醸し出す安心感って格別ですね。そこが変わってしまうと『時代が変わった』と思うほど大きく響きます。


 今考えてみると、守成している店って、店主の人柄も魅力的だし、実力もあるし、誰かを安心して連れて行ける店構えではありますね。それにビジネスに対して冷静な目と、『継続は力なり』の大事さを知っている根気強い人たちも多かったなぁ。

 それに、変わらないために目に見えぬところで変わっていく努力を惜しまない印象でした。


 web小説だってそうなんですよね。

 プロットを組むのは楽しいし、わくわくするし、意欲が溢れます。

 けれど実際に完結に向けて書き続けることは難しいです。むしろ苦しいです。よく「なんでこんなことやってんだ」って思うことありますけど、やらずにはいられないんだから仕方ないですね。

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