笛吹けども踊らず

 『笛吹けども踊らず』とは、段取りを整えて、さかんに誘ったり促したりしても、誰一人応じる者がないことのたとえ。『新約聖書・マタイによる福音書』にある言葉からです。


 うちの地元では毎年八月に『八木節まつり』があるので、夏が近づくと祭りじゃなくてもあちこちで軽快な八木節の笛の音が聞こえてきます。お囃子の練習があるのですよ。

 みんな八木節が好きで、『笛吹けども踊らず』の真逆をいっているかも。

 ここらへんの出身なら誰もが踊れるし、八木節の笛の音を聞くと体がうずうずする人が多いようです。うちの息子もいずれ踊りを覚えさせられるのでしょう。


 私は山形生まれですから、花笠音頭を強制的に踊らされていましたね。

 赤い花のついた傘を持って踊るのですが、こぶしのきいた歌とメロディは覚えています。けれどさすがにもう何十年と踊ってないので、踊りはうろ覚えです。


 北海道では92年から始まった『YOSAKOIソーラン祭り』が知られるようになってますね。

 当時、北海道大学の学生だった人が高知県の『よさこい祭り』と北海道の『ソーラン節』を融合させて考案、実現させたものです。


 あの頃、大学のゼミでお世話になった先生は「よさこいソーランも確かに文化の一つではあるね」と仰っていましたが、地元では賛否両論なイメージでした。

 はまる人ははまるんですよ。大勢でピシッと揃った踊りは気持ちいいと思います。祭りというより、スポーツに近い感覚なのかなぁ。

 けれど、ちょっとスポーツ根性的なノリが苦手な人もいれば、騒音にしか聞こえないという人もいるし、祭り自体が商業化して嫌だという人もいました。『笛吹けども』ならぬ『鳴子鳴れども』踊らない人もいるわけです。


 それを考えると、八木節の愛され方は盲目的かもしれないなぁ。

 町内会や婦人会でしょっちゅう踊りの練習やらお囃子の稽古があるようです。あの笛を吹いてみたいなと憧れますが、学生時代の健康診断で「肺活量が老人並み」と言われた私には無理かもしれないです……。

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