御意見五両、堪忍十両

 『御意見五両、堪忍十両』とは、人の忠告は五両の値打ちがあり、つらいことをじっとこらえることは十両の値打ちがある。人の忠告をよく聞いて、なにごとも忍耐すること、これが大事だということ。


 年齢を重ねるほどに痛感するのですが、忠告をくれる人というのは、どんどん貴重になっていくんですよね。『面倒だな、付き合ってらんないな』と思うと、すっと離れていくことが増えていく気がします。

 裏で文句を言っていても、顔を合わせればいい顔ばかりする人も増えます。事なかれ主義というか、見て見ぬ振りも多くなります。


 何か負のものを抱えた相手と向き合う気力や余裕がなかったり、それに引きずられるのが嫌で切り離したりと理由はそれぞれでしょう。

 お節介と言われようとも忠告している人って優しいなと思います。自分が傷ついてもなお、導こうとするのって思った以上に大変なんですよね。一種の依存や『正しさ』への固執という理由もあるでしょうが、そういう人は根本的には正義感が強く、情が深いのだと思います。それだけに、きちんと自分を叱ってくれたり導いてくれる人というのはありがたいものだとしみじみします。


 この『御意見五両、堪忍十両』って学校や仕事でもそうですけれど、私にとってはweb小説を書き続ける上で感じてきたことそのもの。


 他サイトで何度か読者さんからアドバイスをいただいたことがありますが、何年たっても、似たような場面に直面したときにふと思い出すのです。そしてそのアドバイスを意識して書きます。一人がそう思うということは、もっとそう思う人がいてもおかしくないんですから。


 私がこうしてwebで小説やエッセイを書き始めてたった四年ほどですが、ランキングとは無縁でも、思うように閲覧数が伸びなくてもじっとこらえることが継続の秘訣だったのかなと思います。つまり、数にとらわれないことですね。

 もちろん人間ですから続けるモチベーションは欲しいし、読んでいただけたり、感想をいただくと本当に励みになります。数ってわかりやすいんですよね。

 けれど、それがなくてもまずは自分が書かずにはいられないことを書ききるしかないんですよね。

 私にweb小説を書くきっかけをくださった某web出身の書籍作家さんがいつだったか「書き手の本懐は完結の向こうにある」と仰っていました。誰にも読まれなくても完結する根性と、読まれた数よりも、そのあとにどれだけのものを心に残せるかが大事なんだと私は彼から教わりました。


 そういえば、以前は他サイトで「読んでください、感想ください」って宣伝がすごく多かったんですよ。でもここ数年は全然きません。あの頃、宣伝していたのってお若い方が多い印象でしたが、今はどうしているのかなぁ。

 閲覧数が伸びなかったりして、『自分は駄目だ』って絶望して去った人もいるのかな。そう思うと非常に残念ですが。


 一度、そういう宣伝してきた方と接した経験から、忠告をどう自分の糧にするかで、五両になるかどうか決まるなと痛感したことがあります。

 忠告も忍耐も、するだけで五両十両になるというわけじゃないんですね。プライドの持ちようも大事だし、同じ過ちを繰り返さないための転んでもただでは起きない根性と貪欲さも必要だと、経験から教わりました。人生、難しいものですなぁ。

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