親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない

 『親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない』とは、親が子どもにする意見は一つとして無駄がなく、すべて役に立つことばかりだから、心して聞くべきだということ。


 『仇』は『徒』とも書き、実を結ばない『徒花あだばな』のこと。茄子の花が千に一つも無駄なく実をつけることにかかっているんだとか。

 子を持つ親の身になると、こうありたいものだと思う言葉です。


 人生の先輩として両親が私に残してくれた言葉はそんなに多くはないと思います。二人とも、私の進路や人生の決断に口出しをしたことがありません。

 母は「勉強しろ」どころか「早く結婚しろ」「孫の顔が見たい」なども言ったことがない人ですし、無口だった父にいたっては幼い頃は会話もろくになかった有様でした。父が言葉なしに教えてくれたのは、「酒はスマートに飲め」と「家に仕事を持ち込むな」くらいでしょうか。


 一方、母は何度か、言葉で語ってくれたことがあります。

 「勉強せずとも歯を磨け」とか「金を貸したら捨てたと思え」とか「恋は熱量」とか、なんだか実用的な言葉ばかり。

 でも一番心に残っているのは、「家族が笑顔になるにはお母さんが笑っているのが一番。それに男を照らすのは女だから、母にしろ妻にしろ恋人にしろ、女は太陽でなくっちゃだめ」ということ。


 特に『女は太陽でなくっちゃ』という言葉は、最も心して聞くべきものだと思います。

 くよくよウジウジしていたら、自分にできることを見逃してしまうかもしれませんもんね。背中に太陽を背負っているようにからっと朗らかな女性でありたいものだと思います。


 つい子どもが心配なあまりぐちぐち言いたくなるんですけど、私も両親のように仇のない実のある言葉をシンプルに心に刻める日がくるのかなぁ。

 初めて一人暮らしをしたときも、両親のありがたみを実感しましたが、子育ての難しさに直面するたびに、あらためて彼らに感謝するのでした。

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