第7話 異教
翌日、登庁すると班長が希榛に耳打ちをしてきた。
「織部、所長がお呼びだ」
ついに呼び出しがかかった。しかし、希榛にとってはこれは初めてのことではない。しばしば無理な捜査をして、「うまくいったのは結果論だから気をつけるように。あと、まともに食べて寝ろ」と言われることもある。
今回もその類だろうか。休日の捜査を目立たせないために、通常業務量を増やしすぎて怪しまれたということか。
「お前ら、何やったんだよ」
「お前、ら……?」
所長室に行ってみると、そこには理瀬の姿もあった。
「えっ」
理瀬まで希榛の無茶に巻き込んだ覚えはない。
とりあえず、理瀬の横に並んで立った。理瀬も困惑した表情を浮かべている。
所長は、最近白髪が混じり始めた40代半ばの男だ。希榛よりも眼光鋭く、その考えは希榛でも読めない。
「織部、今日は小言を言うために呼んだんじゃない。お前たちだけに依頼したいことがある」
「依頼、ですか?」
理瀬がオウム返しに訊きかえす。
「2日前、メタルバンド《ハイデントゥーム》のルシリアこと、高森琴音が失踪した。バンドメンバーから通報が入ったんだ」
その瞬間、外の人の足音や空調の音などの雑音が全て消え、希榛の耳には所長の言葉だけが倍ほどに増幅されて聞こえるようになった。
「そのメンバーは高森琴音とルームシェアをしていたようで、彼女は携帯を部屋に置いていったそうだ。一日は携帯を忘れたまま過ごしているのだと思って気にしなかったが、そのまま帰ってこず、翌日の打ち合わせを兼ねた練習にも来なかった。他のメンバーや共通の友達も、彼女の行方を把握していなかった。それで、失踪として通報したというわけだ」
いろいろな疑問や悪い推測が渦巻く。言葉を発する余裕がない。
「行方不明人の捜索は、同じ部内でも生活安全係の仕事だが、今回は特別に織部と新也で捜査に当たってほしいと、部長からの命令だ。私もいろいろ引っかかっているが、真意は聞き出せていない。ただ、部長は彼女の携帯の通話履歴から織部の記録が見つかり、メッセージも時々やりとりしていることから捜査に加えたと言っていたが。それと、お前たちは今から彼女の捜索に専念しろ。そのことは班長にだけは伝えてある。以上」
その言葉で、希榛は他の音が聞こえるようになった。
「大丈夫ですか、織部さん」
心配そうな理瀬の声も聞こえる。所長はその鋭い目で、希榛を見据えた。
「……知り合いの失踪で動揺するのも、いきなり畑違いの捜査で混乱するのも分かるが、冷静になれ。いつものお前のまま、事に当たれ」
「…………はい」
やっと出した声は、ものずごく低かった。
「
無駄な質問だと自分でも思うが、一応訊いてみる。
「無理だ。お前たちだけで捜査してほしい」
有無を言わせない断言だった。希榛は別段、そのことに対しては驚かなかった。
「まず、ハイデントゥームの所属レコード会社に行ってこい。メンバーに聞き込みできるように話が通してある」
話はそれで終わりだった。追い出されるように小会議室を出た。
「おかしいですよね。こんなの、異常です」
廊下を歩きながら、理瀬は憤りを露わにした。
「というか織部さん、ルシリア様とお知り合いだったんですか!?」
いきなり立ち止り、理瀬は希榛に詰め寄った。
「今言うのか」
「あまりの異常事態に霞んでしまって。なんで今まで教えてくれなかったんですか。ついこの間、まさにハイデントゥームの話題になったのに、なんで隠してたんですか!」
「隠してたんじゃない。わざわざ言う必要がなかったから黙っていただけだ」
「それを隠すって言うんです。……それで、どういうご関係なんです? 通話記録があったってことは、最近電話したってことですよね」
「大学の同級生だ。同じ授業を取っていた。デビュー前からの、ただの知り合いだ」
「本当ですかぁ?」
なぜか疑わしげな視線を向け、妙に突っかかってくる。好きなアーティストの失踪でショックを受けているのだろう。
「電話は向こうからかかってきた。元気そうで、俺が元気にしているか様子をうかがうような内容だった。バンドも順調そうだったし、失踪の兆しは感じられなかった」
「だとすると……」
一転して、理瀬の顔が青ざめた。
「誘拐か、もしくは――」
誰でも思いつく悪い想像を、理瀬は遮る。
「やめてください。最悪の事態を未然に防ぐのが、我々の仕事です」
「そうだな。とはいえ、これ以上ないほど分が悪い。いつも以上に素早く動かなければ間に合わなくなる」
全く畑違いの、しかも命に関わる捜査をいきなり二人だけでやれなどと、嫌がらせとしか思えない命令が下っている。
協力者も望めない以上、二人で冷静な分析と判断をして一刻も早くルシリアを見つけ出すしかない。
ハイデントゥームの所属レコード会社は、《スワロウ・レコード》。観光地ともなっている大きな緑地公園に面した、大きな自社ビルがある。
レコードといっても今どきは配信のみだ。CDでは容量の問題で音の全てを収録することができない。一曲あたりの価格も安価となり、専用の機器にダウンロードして最高の音質で聴くのが当たり前となっている。
そんな音楽業界で、ハイデントゥームは絶大な人気を博している。
ダウンロード数はそれほどでもないが、ライブでの集客力が飛びぬけているのだ。エフェクトに頼らないロックは近年衰退してきたと言われているのに、中でもマイナーなメタルというジャンルでの大成功は異例と言っていい。
今、最も波に乗っているメタルバンド、ハイデントゥーム。そのギターボーカルでバンドの中心的存在であるルシリアの失踪。
「メンバーも、すごく落ち込んでいるでしょうね……」
理瀬は残されたメンバーのことを思っているのか不安げな表情で、応接室のドアをノックした。
「どうぞ」
中年らしき男性の声。理瀬はドアを開けた。
「『音楽と言葉を信奉せよ! われら異教の
立ち上がった2人の若者が、バンドのキャッチコピーとともにメロイック・サイン(中指と薬指をたたんで親指と人差し指と小指を立てるサイン)で各々のポーズを決めた。
希榛の隣で、理瀬がルシリアのポースをしていた。真顔で。反射的なものなのだろう。
「……センターがいないと締まらないな」
ルシリアが立つべき中心に穴が空いたようになっている。
「そうなんスよね~」
金髪のソフトモヒカンの青年が言った。黒いロングコートの襟と袖にスタッズがびっしりと付いていて、ズボンは黒のデニム素材で傷や破れの加工が徹底的に施されている。そこへ厚底の編み上げブーツを履いている。
青年は、ゆるく笑いながら頭を掻いた。
「うちらはルーシーが要ですから」
少女のようなおかっぱ頭で赤毛の女性が言う。
女性は黒いタンクトップに赤と黒の太い横縞の付け袖をベルトでつけ、ビリビリに裂けたようなデザインの、赤ワイン色のスカートを穿き、黒いスニーカーを履いている。首には首輪、指や腕には大きなシルバーアクセサリー、頭にはシルクハット。
「あっ、私はアンジェリーナ。アンジーって呼んでください。こっちはビリーです」
「どうもっス。自分はドラムで、アンジーはベースなんスよ」
「知ってる。あんたらの音楽は聴いてるからな」
メンバーの名前と担当、カラーくらいは覚えている。
「マジすか!? あざっス!」
二人とも奇抜な衣装とメイクだが、日本人だ。ハイデントゥームの中での名前だ。ルシリアも、本名は
「お2人とも、すごく元気ですね……」
とても、仲間が失踪した直後の様子とは思えない。ファンである理瀬も、さすがに引いている。落ち込んでいると思って会ったのだから、当然だ。
「私たち、ルーシーのことは心配ですよ。どこ行ったのかなって。でも、無事に生きてるって気はしてるです。自殺とか殺人とかじゃないだろうなって、なんとなく思っているのです。だから無駄に落ち込まず、元気でいようって思ったのです」
アンジーのくりくりした大きな目も舌足らずな喋り方も、幼い印象だ。
やけに楽観的な言葉は、想像力の欠如か、ショックのために実感が湧いていないか。おそらくその両方だろう。
「あいつとルームシェアしているのはあんたか?」
「そうです」
「自殺や殺人でないなら家出ということになるが、その心当たりがあるのか? たとえば、大ゲンカをしたとか」
「それはないですけど」
仲も悪くないのに家出するとは考えにくい。
「自分も、別にケンカはしてないっス。っていうか、ルーシーとは音楽の話ばっかりであんまりプライベートなことは言わないっスね。音楽にしたって、自分もアンジーもルーシーを尊敬してますし、好みも一致してますから、音楽性の相違みたいなもんもないんじゃないっスかね?」
家出の原因は個人的なケンカでもバンドへの不満でもなさそうだ。
「プライベートといえば、実は私もあんまり深くは知らないのですよ。お互いの部屋にも滅多に入らないですし」
アンジーに至っては、ルームシェアをしていながら個人の領域をはっきり区切っているようだ。
「あんたら、どんなバンドだ……」
バンドメンバーは昼も夜もなく苦楽を共にし、同じ釜の飯を食うというのが希榛のイメージなのだが、このバンドはかなり個人主義で、釜さえ別々のようだ。
「まあ、このバラバラっぷりは我ながらどうかとは思うっスけど、だからこそ馬が合うってことで、仲良く続けられたとも思ってるっス。誰か1人でもメンバー=家族みたいな熱血体育会系の奴がいたら、すぐ解散になってたと思うっスよ」
全員がお互いに対してドライなので、干渉によるストレスがなく、全員にとって過ごしやすい関係というわけだ。
「そのせいで、失踪に気づくのが遅れたんじゃないですか。警察官の私が言うののもなんですが、ルシリア様には命の保障だってないんですから。のんびりしてる場合じゃないですよ!」
理瀬はのんびりしたメンバーに苛立っていた。
「不安を煽るな。ほんとに警察官の言うことじゃないぞ」
対して、希榛も冷静である。
「織部さんも織部さんです! なにを悠然と構えてるんですか。それでもお友達ですか!?」
「えっ」
驚いたのはアンジーとビリーだ。
「刑事さん、ルーシーの友達なんスか!?」
「ああ。まあ大学の同級生で」
「付き合ってたんですか!?」
3人が声を合わせて詰問してきた。なぜか理瀬まで。
「いや全然」
若干戸惑いつつ冷静に答えた。理瀬とビリーは安堵したようにため息をついた。
「でもでも、ルーシーは時々、思い出したように大学の同級生の男の子の話をしてたですよ」
アンジーが1人、反論を唱えるように言う。
「いつも冷静で無表情で、頭はいいけど何考えてるか分からなくて不器用で、電話もメッセージもそっけないけど、なんとなくお気に入りの子がいるって。有名になってから会えなくなって、気になってるとも。それってもしかして……」
3人の視線が希榛に集中する。
「俺だと言いたいのか? そんなわけないだろう。確かに俺はあんたの言った特徴に当てはまるかもしれないが、あいつには他の男友達だっていただろうし、その中に同じような性格の奴がいてもおかしくない。第一、俺なんかが誰かに気に入られるわけがない。しかもあいつのお気に入りなんて、ますますあり得ない」
3人ともつまらなさそうな顔をした。理瀬などは、額に手を当てて呆れかえっている。希榛としては確信に近い推測を述べたまでで、呆れられる謂れはない。
「何なんだ……。そんなことより、それこそあいつに恋人はいないのか? もしくはストーカー被害に遭っていたとか。その男がルシリアを攫った可能性もある」
アンジーは少し考えてから首を横に振った。
「それはないと思うですよ。いくらバラバラったって一緒に住んでますから、恋人がいれば気づくはずですし、ストーカーもないと思うです。実はルームシェアは防犯の意味があって、お互いに守り合うようにしてたんです。私、こう見えて空手の段、持ってるので。何かあったら撃退してあげようと思ったですが、何もないのです」
「そうか……。他に何か変わったことは?」
「うーん、よく分からないです……。練習も順調、作詞もうまくいってたです。新曲もできたばっかりなのですよ」
「新曲!?」
理瀬が思わずテンションを上げてしまい、小さく謝った。
「休みの日は何をしてるんだ。何かこう、相談されたりはしなかったか?」
「それが……最近はお休みの日に起きるとルーシーは出かけた後ってことが多いです。あと、そういう日に限って携帯を忘れていくですね」
「……あんたら、ほんとに共同生活うまくいってるのか?」
バラバラにもほどがある。
「いってるですよ。晩ごはんはいつもいっしょで、お風呂だっていっしょですよ。とっても仲良しなのです!」
アンジーは頬を膨らませて反論した。そんなのは当たり前だというように。
「いっしょに風呂に?」
「はい。ルームシェアの女の子の間ではごく当たり前なのです。2人で入れる広めのお風呂で洗いっこするのが流行ってるのです」
なんとなく理瀬のほうを見ると、理瀬は手と首を振って否定している。
「風呂はともかく、休日に携帯も持たずに出かけるということは、そのときの行動は誰にも分からないということだな。失踪したのも休日。誰かに攫われたなら、犯人はあいつが休日は1人だということを知っていたことになる」
「私が気づいてなかっただけで、ルーシーは狙われてたってことですか……?」
アンジーの大きな目に、涙が溜まっていく。
「あの子を守るために……いっしょに住んでるのに! 私がいれば、悪い奴なんてやっつけるって言ったのに! ぜんぜん役に立てなかったです……! これでもし、あの子がひどい目に遭ってたら、私のせいです……」
アンジーは声をあげて泣き出した。
「ま、まだそうと決まったわけじゃない。泣かないでくれ。あんたに責任はない。家で何もなかったなら、それはあんたがいたからだろ?」
希榛が宥めても、まったく泣き止まない。事情聴取で女性を泣かせたのは2回目だ。
「不安を煽るどころか泣かせちゃったじゃないですか。もう……。大丈夫ですよアンジェリーナ様。ルシリア様はきっと私たちが無事に連れて帰りますから。この
「唐変木……」
妙に古風な罵られ方だ。理瀬の口からそんな言葉が出るとは。そしてそんな目で見られていたとは。
「大丈夫っスよアンジー。ルーシーは強い子っしょ? それに、オレたちにできることは、刑事さんたちに協力することだけっス。この2人も強くていい人っスから、ちゃんと見つけてくれるっス」
ビリーも加わり、全員で慰めるとやっとアンジーは泣き止んだ。
そのあと、ずっと黙っていたマネージャーにも一応話は聞いてみたが、やはり何も有力な証言は得られなかった。
それから全員で、ルシリアとアンジーが住んでいた部屋に向かった。
そこは高級マンションで、オートロックはもちろんコンシェルジュまでついていて、専属の業者に部屋の清掃と衣類のクリーニングも頼める。
「す、すごいですね……」
理瀬はその豪華さに圧倒されていた。
「セキュリティもしっかりしているし、警備会社がついているみたいだな。あんたが直接、暴漢を撃退しなくてもいいんじゃないか?」
ルームシェアなどと言うから、家賃などの節約のために同居しているものと思っていたが、それならこんな高級な部屋に住むことはないし、バンドの売れ行きからしても節約の必要性は全くない。もちろん、セキュリティ面にも不安はなさそうだ。
アンジーは照れたように頭を掻いた。
「シェアは、実はルーシーが言い出したことなのです。まあ、空手有段者の私と住みたいっていうのは口実というか、こじつけというか。ルーシーは、ただ誰かといっしょにいたかったんじゃないかって思うですよ。私もルーシー大好きですから、いっしょに住めるの、嬉しかったですし」
ルシリアは寂しがり屋なのだ。大学のときは何かにつけ、よく電話がかかってきていた。用のないときは他人に連絡しない希榛は、世間話をしたがるルシリアを不思議に思っていたが、そういうことだったのかと今思った。
「それにしてもやっぱ豪邸っスよねー」
ビリーは、メンバーなのに理瀬と同じように驚愕している。
「あんたは同じような生活をしていないのか?」
「お金は同じようにもらってるっスけど、自分は昔から住んでる貧乏アパートが落ち着くんで」
そういうものか、と希榛は思った。希榛も警察の寮に住んでいるが、別にそこが落ち着くというわけではなく、何のこだわりもない。ただ、これからは捜査が長引くかもしれず、いちいち届出を出すのが面倒なのでそろそろ部屋を探すつもりだ。
セキュリティを通って2人の部屋へ。
広い居間とキッチンとトイレと風呂があり、各自の部屋もある。共用スペースはあまりゴシック趣味ではなく、シックで落ち着いた雰囲気だ。ただ、カーテンや家具類はどれも高そうである。
そしてルシリアの部屋に入る。
やはりというか何というか、そこは紫と黒のゴシック空間だった。薄紫の壁紙、黒いミニシャンデリア、黒いソファにスカルのついた黒のドレッサー、黒の天蓋つきベッドには紫のシーツのベッドと枕。黒い猫足の机には、ブラックメタルの小さなノートパソコンがあった。
そこは、希榛が前に訪れたSpiegelのルシリアの世界の城の部屋が再現されたような部屋だった。
とりあえずノートパソコンと、机の中身とゴミ箱を回収した。
「ゴミ箱まで持っていくですか」
アンジーは容赦ない回収に驚いている。
「ゴミが重要な手がかりになることはよくある。とくに失踪の場合はな」
ゴミから情報を得るのはトラッシングという技術で、警察も使うが、おもに探偵やストーカーの手段でもある。
「次はあんたの部屋だ」
「私の部屋もですか」
アンジーはさらに目を丸くする。
理瀬が言いづらそうに口を開く。
「申し訳ありません。この家全体から手がかりを得るためには、アンジェリーナ様のお部屋も見なくてはならないんです……」
アンジーはそんな理瀬に、慌てて首を振って答えた。
「いえいえ、ちょっと驚いただけですよ。普通に考えたら当然のことですよね。どうぞ、見てくださいです」
アンジーの部屋はやはりゴシックだったが、色は赤と黒だった。壁紙とベッドシーツが赤で、机などは黒だ。ただ、ルシリアの部屋は貴族のような豪華さが演出されていたが、アンジーの部屋はロックやパンクのテイストが入っていて、壁には自分たちのほかに昔の有名なメタルバンドのポスターも貼ってあり、愛用のベースが床にスタンドで立ててあった。
ゴミ箱と机の中身は回収したが、パソコンと携帯はデータを外部記憶媒体にコピーさせてもらうだけにした。
「ってことは、自分もっスよね」
それから移動してビリーの部屋にも行った。
ビリーが言ったとおりの小さなアパートで、中も別にゴシックではなかった。
ただ、意外と片付いており、グレーと黒を基調にしていて、パソコン周辺とバイク関係の飾りが充実していた。男子の部屋だ。
やはり携帯とパソコンのデータをもらい、ゴミ箱と机の中身を回収した。
「ご協力、ありがとうございます。何か分かればすぐに情報を共有しますので、みなさんも何か気づいたことがあれば、どんな些細なことでも言ってくださいね」
荷物の仕分けと梱包を終え、理瀬が頭を下げた。
「……ありがとう。預かったものは全て、警察で厳重に管理させてもらう。そしてこの中から、一刻も早く有力な手がかりを見つける」
希榛もぎこちなく礼を述べた。
「私たちも、ルーシー捜索を全力でお手伝いするですよ」
「自分たちにできることがあれば、バンバン言ってくださいっス」
メンバー2人は本気でルシリアのことを心配しているようだった。
証拠を見つけたいと思いつつも、この2人とは無関係であればいいとも思った。
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