(4)

 健二と君塚は校門の前に車を停めるやいなや、車内から飛び出し堅牢に校舎を守る門を飛び越えた。

 向かうべき場所は分かっている。健二達が所属していた二年のクラスである2-A。信也と理沙はそこにいる。


 ――いや……信也じゃない。


 もう訳が分からなくなっていた。

 一連の犯行、そして信也の過去、全てを通して考えても久崎信也が犯人としか思えない。

 なのに君塚達を襲ったのは、由香だと言う。


 ――嘘だ。嘘だ、そんなの。


 健二をからかう由香の顔が脳裏をよぎった。意地悪な笑顔が良く似合う、憎たらしい後輩だった。いつもテニスでは打ち負かされ何度も悔しい思いをさせられた。だが憎たらしい口調とは裏腹に優しい心を持っている事も良く知っていた。

 健二がこの事件で憔悴していた時も、電話で元気づけようとしてくれた。


 ――あれも嘘だったってのか?


 健二の足が廊下で一度止まった。

 視線の先に見えるいくつもの教室。

 手前から2-C、2-B、そして一番奥に見える教室。


「2-A。あれか」


 あそこに全ての答えがある。

 もう考えるのは止めだ。

 あの教室の扉を開けた先に映るものが真実だ。


「僕が先に行こう」

「いや、大丈夫です。俺が行きます」

「しかし……」

「わざわざあいつは俺に全てを教えると言った。君塚さんが行ったら下手に刺激してしまうかもしれない」

「……」

「ここで待っててくれませんか? あいつと話をしてきます」

「いや、それはさすがに……!」

「その代わり、何かあったらすぐに助けに来てください。お願いします」

「……分かった。気を付けるんだぞ」

「はい」


 そして健二の足だけが、2-Aへと向かった。

 真実と向き合う為に。

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