第16話

 いつの間にか責め立てる様な日差しは弱まり、季節は秋へと変わろうとしていた。

 夏休みが終わり、学校が始まると以前ほど時間に融通は利かなくなった。しかし、それでも僕は暇さえ見つければ、彼女の病室を訪れていた。僕が病院に通う頻度はかえって増えたくらいであった。放課後や休日に約束をするような「友達」は僕には居なかったし、何か打ちこんでいる物があるわけではない。


 どんどんミキハに魅かれていく自分が居た。同年代の女の子と親しくなったのは、いつ以来の事だろう。事によると初めての経験かもしれない。


 僕は舞い上がってしまっていた。


 そして、僕は本当に大切な事から目を逸らし続けていた。

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