第15話
ミキハはよく僕の「友達」の話を聞きたがった。
「友達」がどういう物なのか、僕にはよくわからない。でも、だからと言って、学校でつるんでいる者が一人も居ないという訳ではない。学校という組織で完全に孤立する事は恐ろしい事だ。だから、僕の考える「友達」とは、ある種、互助組合みたいなものとも言えた。孤立した者同士が合わされば、それは孤立ではなくなる。孤立を避けるためには、人と人は身を寄せ合わさねばならない。
だから、僕はミキハに「友達」について尋ねられたとき、そういった関係にある者達との話を上げた。こうやって話題に使う事も「友達」という互助組合における権利行使の一環だろうと思えた。
「友達」が食糧確保の為の校内農地でふざけていて怒られた事や「友達」と学級日誌にふざけた落書きをした事などを話した。
ミキハはそういった「学校」に関する事に興味を示した。
「今の学校ってこの町に一つしかないんでしょう?」
「うん。小学校も中学校も高校も一緒くただ。もう子供が居ないからね」
「消失」が始まってから学校の統廃合は急速に進んだ。ほとんどの子供は消えてしまったからだ。また教員も「消失」し、教える側の人手も足りなくなった。その結果、小学校も中学校も高校も合わせて、どこでも一つの町に一つか二つしか学校は無くなったのだった。
「ミキハは学校に行った事無いの?」
「うん。生まれつき病気でずっと入院してるから」
ミキハはあくまで何でも無い事の様に言った。
「だから、「友達」って出来た事無いんだ」
この言葉でミキハが「友達」とはどういう物かしきりに尋ねていた理由がわかった。
知らないのだ、彼女は。
「でも、今はカケルが居るから大丈夫だね」
ミキハは無邪気な笑みで言った。
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