第3話
直に人類は滅ぶ。
三年前、僕がまだ何も知らない中学生だった頃。それは何の予兆も前触れもなく、起こった。
「消失」現象。
人間が、消える。
それは比喩でも何でもなかった。文字通り「消失」するのだ。
後には何も残らない。身体はもちろんのこと、身に着けていたものすら残らず消える。まるで存在そのものが幻であったかのように、体が透け始め、なくなってしまう。
後に「審判の日」と言われることになる最初の「消失」が確認された日、世界は未曽有のパニックに陥った。目の前にいた人間が突如消える。こんなことが世界中で同時に起こったのだ。混乱が起きない方が嘘だろう。
新種のウイルスだとか、何かの兵器だなんて噂も立ったけど、最終的には一つの結論のようなものが出された。
これは神様から与えられた罰だ。
きっと神様が人間を滅ぼすことに決めたのだ。
科学での解決が見込めない以上、後に残るのは信仰だ。
結局、人類は見た事もない神様に負けてしまったんだ。
人々がこの結論に辿り着くまでには一年以上かかった。やはり、誰もが認めたくはなかったのだろう。自分達がこんなにも理不尽な終わりを迎えなければいけないほど罪深い存在であったことを。
環境破壊とか、戦争とかタブーになりそうなことはいくらでもあげつらうことができるけれど、何が神様のお気に召さなかったのかは結局わからない。でも、神様が決めたことなのだから、間違いはないのだろう。きっと。
今も人類は人口を減らし続けている。
初めて「消失」現象を目の当たりにしたときは動揺した。不安に押しつぶされそうになる夜も何度も過ごした。見たこともない神様を恨みもした。でも、最終的には割り切ることにした。
だってそうだろう。人はいつか死ぬ。
そう考えれば、もとの世界と「消失」のある世界、何が違うというのだろう。むしろ、苦しまずに人生を終えられる分、ラッキーなくらいじゃないだろうか。
そうかな?
そうだよ。
そんな自問自答を繰り返しながら僕は残された人生を過ごしていた。
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