違う朝

――朝日の光が、部屋の窓に差し込む。

「……いつのまにか眠っていたのか。」

昂太は仰向けになって寝転んだまま、泣き疲れて寝ていたようだ。

昨日、着ていたものが今でも着ている事がそれを物語っている。

だが、点けたままの部屋の明かりは消えていて、ベットの脇の開いたままであったカーテンも閉まっている。

昂太は不思議に思っていた。そんな時、不意にベットの中で何かが動くのを感じた。

「―――――ッ!!!?」

そういえば、自分の体がいつのまにか掛け布団の中に入っているのに昂太は今更ながら気付く。

そんな事はどうでもいい。

重要なのは今さっき動いたのは何だ、という事だ。

この家の住人は俺と親父だけ。

(と、なるとこの中にいるのは……!いや、泥棒という可能性も……。

って、どっちも最悪じゃん……)この中にいるのが下の階にいる動物でありますように。

そんな切ないお願いをしながら昂太は掛け布団をめくり上げた。中にいたのは――

「んっ……ぅ……」

女の子、だった。

「へ……?」

予想外の出来事に戸惑う昂太。

落ち着きを取り戻し、とりあえずベットの上の女の子を見た。

歳は自分と同じくらいか、一つ下か。

髪の毛は肩辺りぐらいで耳が隠れるぐらいの短めのセミロング、茶色がかったというよりかは栗色をしていた。

体は小さい方だと思う。

その割にスタイルはよかった。

(――って待て!よく見たらこの子、俺のその辺に掛けていたTシャツ一枚だけ……!)


そこで彼女を見るのは止めた。


そして自分を嫌悪した。


恥ずかしくもなった。


あのエロ親父ならじっと見ていただろうが、どうやら俺はこういうところは母さんに似たようだ。



このままでいるのもどうかと思い、昂太は彼女を起こそうと近づいて肩に手を掛けた。



ふと、昂太は気付いた。

「この子の手……何だ?近づいてわかったけど、俺のような手とはまるで違う……。何ていうか……」

その時だった。

「ぅう〜ん……」


「うわっ!?」

彼女が寝返りをうったのだ。

たぶん布団を取られたせいだろう。

昂太は手を掛けたまま、引っ張られるようにバランスを崩し……ドサッ!

「あ゛……」

彼女に抱きかかるかのような態勢になってしまった。

「ぅん〜?」

そして間の悪い事に彼女が起きてしまう。向きを変え、昂太の方を向く。

「あ……ゴ、ゴメン!あの、これはその、えっと、じ、事故でさ!別に変な気を起こした訳じゃ……」

慌てて弁解しつつ、ゆっくりと離れていこうとする昂太に少女は跳ねるように抱きかかった。

ドサッ!今度は床に激突した。

下になっている昂太はさぞ痛い事だろう。

だが、昂太にはそんな痛みを感じる余裕さえなかった。

「わ……わわわわわわっ!!!」

少女の整った顔が、目の前にあったからだ。

少女はそのまま、昂太の唇にキスをした。

数秒間のキスの後、彼女は恥じらいながら、顔を赤くして言った。

「お…おはよう……ござい…ます……」

彼女は下をうつむいていた。

恥ずかしさのあまり顔から湯気が出そうなくらい真っ赤に顔を染めて。

だがそれよりも重傷だったのは、放心状態に陥っている昂太の方だったのだが。


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