epilogue

 大切にしているもの。大事にしているもの。人によってその形は様々で、それは目に見えないものかもしれない。

 けれどその大切なものは、たった1つのきっかけで簡単に壊れてしまう。弱く脆いものだ。


 俺は、この選別ゲームの中で人が壊れていく姿を嫌というほど見てきた。何を考えているかわからない人。平気で友達を殺す人。自ら死を選ぶ人。裏切る人。

 全員友達だったはずなのに誰を信じていいのかわからなくもなった。疑わずにはいられない状況だった。

 それでも最後まで変わらない人もいた。

 こんなゲームさえなければみんな変わらずに済んだはずだ。だが、もうそのみんなはいない。5人しか残らなかった。

 ゲームが始まったときは、なんとかなると思っていたが実際はそんな甘くはなかった。自分が考えている以上に俺は無力だった。訳のわからないゲームに巻き込まれ逆らうこともできずに生きるのに必死だった。


 この選別ゲームはあってはならない。いくら人口が増加していて手が付けられないからといってこのやり方は間違っている。

 ゲームを作った奴は相当頭のネジがぶっ飛んでいる。そいつを叩かない限りこのゲームは永遠に続くだろう。

 色々な思いで死んでいったクラスメイトの分まで俺たちは生き残らなくてはならない。簡単には死ねないし死ぬ気もない。

 俺はこの選別ゲームを終わらせる。政府の関係者か、はたまた第3者なのかはわからないが、新国家の頂点であぐらをかいて高みの見物をしているであろうそいつを俺はぶっ潰す。


 俺は、新国家に向かう車の中でそう誓った。



第1章 楠木第二高等学校編完結。

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