2章 私立松林高等学校編

prologue

————楠木第二高等学校で選別ゲームが行われる約一年前。


 私立松林高等学校1年4組。 



 友達とはどんな人のことを言うのだろうか。

 一緒に居て楽しい人。

 自分のことを真剣に考えてくれる人。


 知らない内にでも話をしていれば自然と友達になっているって?

 果たしてそうだろうか。

 こっちが友達だと思っていても相手はそうは思っていないかもしれない。

 周りに敵を作りたくないからとりあえず全員にいい顔をしているだけかもしれない。


 友達とゆうのは実に難しい。

 簡単に友達をやめることもできるし、何年も会わないと忘れてしまうことだってある。

 結局のところ自分にとって都合の良い人間かそうでないかではないか?

 利用する価値があるかそうでないか。

 

 そして、人には表の顔と裏の顔が存在する。

 いい人そうに見えても、実は犯罪者なんてよくある話だ。


「そんなことする人じゃなかったのに」


「会ったら挨拶もしてね、感じのいい人だったと思ったんだけどな」


「まさか! あの人が!」


 報道番組のインタビューなどで聞く、友人や近所の人の答えが大体これだ。

 こう答える人は、友達だと思っていた犯罪者の本当の顔を見ていなかっただけだ。いや、上辺だけの外面しか見せられない関係だったのか。


 生きていく上では、どんなに人と関わらないように生きても、どこかで必ず関わらなければならない時がくる。

 その時、私が、今話したことを1度思い出して欲しい。それと同時にお互いを疑うような関係ではなく、こんなことを考える暇など与えてくれない心から楽しいと思わせてくれる友達を作るべきだ。




「はい、ありがとうございます洋一よういち君」


 ロングホームルームの授業中、担任の半田先生に指された俺は、プリントを読み終えた。


「ちょっと、今回の題材は考えさせられる内容でしたけど、みなさんには何の問題もないですね」


 半田先生が1人1人生徒の顔を笑顔で見る。眩しい、優しい顔だ。

 ふと横に目をやると、俺の隣の席の石塚蓮いしづかれんがペン回しをしていた。


「では、プリントに感想を書いた人から前に出して終わりです」


 蓮がペン回しを止め、感想を書き込んでいた。俺が黙って横から覗き込む。

 蓮の感想欄には、「文章の最後に筆者の想いを感じた。このクラスのみんなと最高の友達になる」と書かれていた。

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