第25話 はいチーズ
「今までクラスメイトを殺してたのは誠なのか?」
誠は、何も言わずニコッと笑った。そして丸い点2つ、明日香と翼の元に走り去っていった。
「誠が人を殺すだなんて」
剛が声を掠らせながら言う。
「まこっちゃん……」
俺たちは1つも点が無い学校に向かった。
そして校庭の隅に座る。
「あと8人か」
「あぁ、どろけいを舐めてたな」
マップを見ると3つの丸い点が激しく動き回っていた。
ブーブーブー、ブーブーブー。
【丹羽翼、ゲーム続行不可能の為、脱落。警察チーム残り2人】
マップから丸い点が1つ消える。洋一と里菜は丸い点から離れた所にいた。
ブーブーブー、ブーブーブー。
【八木明日香、ゲーム続行不可能の為、脱落。警察チーム残り1人】
丸い点が1つになった。誠が生き残ったようだ。学校に向かって点が移動を始める。30分後、誠が学校に姿を現した。
「はやと君、全部終わったよ」
「誠、お前は敵なのか? なんなんだ?」
「や、やだなはやと君。僕は、ずっとはやと君とこころちゃんの味方だよ。だって親友でしょ」
「でも、俊介たちを救出しに行ったとき、裏切ったじゃないか」
「あのときは、そうするしかなかったんだよ。明日香ちゃんと桜ちゃんの信頼を得るには……」
「なんで?」
こころが誠に聞く。
「警察の絶対的支配権を持っていたのが、明日香ちゃんと桜ちゃんだったんだけど、僕が自由に動くためには2人に信頼されることが第一だった。だから、はやと君に嘘を言ったんだよ。僕は、俊介君と同じやり方を早くから実行してたんだ。はやと君たちに生き残って欲しかったから」
俊介と同じやり方を早くからだと?
誠は何人殺したんだろうか。
「俺たちに生き残って欲しかったから?」
「うん。僕は高校に入る前までいじめられてたんだ。それで高校に入って新しい生活が始まってビクビクしてる時、はやと君が声をかけてくれた。凄く嬉しかったよ。1年生の頃も同じクラスで毎日のようにこころちゃんと3人で遊んで、こんな僕を親友って言ってくれた。僕は、はやと君に人生を救われたんだ」
誠は、1年生の頃を思い出して話す。
「はやと君とこころちゃんは命の恩人なんだよ。だから恩を返さないとって思ってこの5日間、僕なりに頑張ってみたんだ。かなり辛かったけど……」
誠が校舎に向かって歩き出す。
「はやと君、最後に写真を撮ろうよ。どうせ僕はもう誰も捕まえる気はないし、ルールで脱落を待つだけだからさ。最後に僕と一緒に写真を撮って欲しいな。剛君頼んでもいいかな?」
「い、いいけど」
「誠いいのか?」
「いいんだよこのために頑張ってきたんだから。こころちゃんも一緒に撮ろう!」
校舎に背を向け3人並ぶ。剛がカメラを構える。
「じゃあ撮るよ。はいチーズ……」
「はやと君、こころちゃん僕のこと忘れないでね。今まで本当にありがとう」
ブーブーブー、ブーブーブー。
【安藤里菜、渡辺洋一、鳥旗剛が特別ルールを達成。よって上杉誠が脱落。警察チーム残り0人】
パンッ。
誠の心臓が撃ち抜かれる。
「まことぉおおおーー!」
ブーブーブー、ブーブーブー。
【警察チームが全滅の為ゲームは終了します。泥棒チームの皆さんお疲れ様でした。教室に集合して下さい】
…………。
ゲームが終わり2年C組の教室に入った。教室には林先生がいた。
少し遅れて里菜と洋一が入ってきた。
「よしっ全員揃ったな」
教室の空席が寂しい。
「とりあえずはお疲れ様。それでな今後について説明しようと思うんだが、まず全員新国家に行ってもらう。じゃあ配って」
政府から派遣された佐々木が国民証と書かれたカードを配る。
「これは、君たちが新国家の住人である証だ。その国民証を持っている限り新国家との行き来は自由だ。無くさないようにな」
そんなことより俺は聞きたいことがあった。
「先生、朝の続きいいですか?」
「あぁそうだったな」
「選別ゲームって結局なんだったんですか?」
「それはだな、増えすぎた日本人の人数調整ってのがまず1つだ。これはみんなも聞いたことがあると思う。2つ目は、才能ある者を見つけるためだな。外国に比べて日本は色々な面で遅れてるのはわかると思うが、圧倒的に劣っているものそれが駆け引き、騙し、心を読む力、知能、そういった劣っているものを選別ゲームを通して超人レベルまで引き上げようとそんな計画が新国家で行われている。今、君たちがやった選別ゲームはその予選みたいなものだな。そこで選ばれた者が真の選別ゲームに進める。生きる資格を与えられる」
何を言っているんだ頭がおかしいのか?
真の選別ゲームだと?
「そんなことでみんな死んだんですか? 他に何かやり方はあったはずです」
「これは上からの命令で変えられないんだよ。先生みたいなゲームマスターが全国に派遣されて選別ゲームを行うことになってる」
「その上の奴はどこにいるんですか?」
「新国家の選別ゲームの頂点。ピラミッド状の1番上に君臨してる」
「そいつを倒せばこんないかれた世界を変えられるんですか?」
「あぁ、だが無理だ。あの方は1度も負けたことがない。今のはやとでは勝てないだろう。というより今のままでは戦うことさえできない」
「それでも俺はやります。この腐り切った世界を変えてやる」
「そうか」
林先生が窓の外を見る。
「それじゃあみんなを新国家まで案内するから着いてきてくれ」
そして、俺たちはそれぞれの目的に向かって進みだした。
脱落したクラスメイト25人の想いを背負って。
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